国内有数の図書館をはじめ、充実した環境を誇るキャンパス
本フェローシップの受け入れ先となるのは、早稲田キャンパスにある「日本語教育研究科」や、早稲田キャンパスからほど近い戸山キャンパスの「文学研究科」が中心になります。
まず日本語教育研究科のある早稲田キャンパスは、早稲田大学のもっとも古いキャンパスです。大学のシンボルともいえる大隈記念講堂をはじめ、演劇博物館などの早稲田大学ならではの歴史を感じる施設も数多くあります。
一方、近代的な建物が目を引くのが、早稲田キャンパス北部にある中央図書館です。「早稲田大学にはそれぞれのキャンパスに図書館がありますが、もっとも大きいのが中央図書館です。地上4階、地下2階のこの図書館には約270万冊の蔵書があります。図書を閲覧する座席数も1800席を用意しており、国内の大学でも有数の規模になっています」と話してくださるのは、早稲田大学国際部国際課長(取材当時)・丸谷充徳さんです。地下の研究図書には中国語図書やハングル語図書、明治期図書など、貴重な研究書が収められており、「この図書館を目当てに早稲田に研究にいらっしゃる研究者の方々もたくさんいらっしゃいます」(丸谷さん)。
また「敷地の中には大隈重信の私邸跡を開放した大隈庭園もあり、学生や研究者の方々の憩いの場になっています」と丸谷さん。さらに「キャンパス周辺にも、日本庭園が特徴的な甘泉園公園がありますし、春には神田川の桜がとても見事で、海外からの研究者の方々も楽しみにしておられます」と国際部国際課外国人研究者受入担当・石倉拓一さんは語ります。
次に、早稲田キャンパスから徒歩5分ほどの場所にあるのが、戸山キャンパスです。
文学研究科のある戸山キャンパスの中央には、芝生の「戸山の丘」が広がり、周りに学部・研究科の建物や図書館、学生会館、カフェテリア、プールなどがあります。さらに2018年には、戸山の丘の地下部分に早稲田アリーナが完成。最新の多目的運動場やスポーツ関連諸室を備えています。「戸山キャンパスのプールやジムなどの運動ができる設備も、研究者の方々に利用していただけるよう手配をしています。実際に『使いたい』というご要望も多く、活用していただいているようです」と丸谷さん。
ほかにも、芝生の広場と建物をつなぐように広がる交流テラスなどもあり、ゆったりと自然を感じながら、研究に打ち込める環境となっています。
早稲田キャンパス「演劇博物館」
戸山キャンパス「戸山の丘」
ネット環境の整った研究室や、さまざまなタイプのゲストハウスを用意
それでは学内での研究者の研究環境や、生活面はどうでしょうか。
海外から留学生や研究者を受け入れる制度を企画立案したり、受け入れに必要なサポートを提供しているのが、丸谷さん、石倉さんの所属する早稲田大学の国際部国際課の方々です。 「来日される研究者の方々には、なるべく本学での研究活動に専念していただけるように、我々のほうで研究室を33部屋用意しています。個室と共同の部屋と両方あり、希望に応じて、また空き室状況をみて使っていただいています。研究室にはもちろんネット環境を整備していますし、プリンターも用意してあります」と丸谷さんは話します。また食事では、学食にもハラル対応のメニューがあるなど、宗教上の配慮もなされているということです。
住まいの面では「海外の先生方や研究者の方にご利用いただける宿舎・ゲストハウスを用意しています。ゲストハウスは早稲田キャンパスから徒歩圏内で5棟、合計114室あります。海外から来られる研究者の方は単身の方もいれば、ご家族を帯同される方もいらっしゃいますので、それぞれのニーズに対応できるように、いろいろなタイプの部屋を用意しています」(丸谷さん)。
また「ゲストハウスには家具がすべて付いています。屋内もWi-Fiが使えますし、食器類や鍋などの調理器具、リネンなどもあるので、来日してすぐに生活を始められます。一年間などの滞在期間で必要な基本的なものは揃っていますので、そのほかに必要なものがあれば個々にご用意いただくという感じです」(石倉さん)。
ほかにも「海外から来日される場合では、ビザが必要なときは書類の作成のお手伝いをしたり、実際に入管に届けを出しに行ったりすることもあります。また研究者のご家族が来日する場合、地域にある保育所や小学校を教えるなど、ご家族のための情報提供をすることもあります」(丸谷さん)。
このように研究・学習の環境が整備されていることで、近年、早稲田大学で研究・留学したいという研究者や学生は増加しているということです。早稲田大学全体では、2018年実績で外国人留学生7942名、研究者が325名を受け入れており、早稲田、戸山の両キャンパスも、海外と日本の学生・研究者が学内で自然に触れ合い、交流ができるインターナショナルな雰囲気に満ちています。
古くから海外に門戸を開き、「世界への貢献」を重視してきた学風
さらに丸谷さんは、早稲田大学の特徴について次のように話します。
「早稲田大学には、建学の理念を表した『早稲田大学教旨』というものがあります。これは①学問の独立、②学問の活用、③模範国民の造就、という三つからなります。特別な学問を追求し、それを世界に貢献するために活用し、グローバルに活躍する人材を育てていくということが、この三つのキーワードに込められています。建学当時は、日本の近代化が始まったばかりの時期で、近代化に必要な人材を育成するというのが大学の最大のミッションだったはずです。しかしその当時から、国際的に活躍する人材を育て、国際的に貢献する研究をするのだと理念に掲げていたのが本学です。つまり、古くから外国に対して門戸を開き、研究者の受け入れを行い、あるいは日本から研究者を送り出してきた、そういうグローバルな環境は今も受け継がれおり、国内外の研究者の流動性はとても高いと思います。
そういう本学の雰囲気や文化は、海外の研究者の方も肌で感じられておられるようです。『早稲田大学には行きやすい、研究しやすい』というイメージを持っている方も多いと伺っています」。
さらに早稲田大学では、2014年から文部科学省の補助を受け「Waseda Ocean構想」にも取り組んでいます。これは「Waseda Vision150」をさらに加速させるもので、2023年までの10年間で中長期受け入れ研究者・派遣研究者を倍増させる計画などを進めています。
「この構想は、世界の研究・教育ネットワークを海に、早稲田大学を港とみなしてほしいということで、Oceanという名称になっています。つまり、本学から海外へ人が出ていき、海外からもたくさんの人が来てほしいという意味です。今後も国際的な人の流動性をさらに高めるために、我々も努力していきますので、研究者の方々もぜひそれを念頭において、研究活動に取り組んでいただけたらと思います」(丸谷さん)。
「招聘研究者が来られるときは、必ず早稲田大学の先生方が、ホストプロフェッサーとしてつきます。文学研究科にしても日本語教育研究科にしても、たくさんの先生方がいらっしゃって幅広い研究領域をカバーしています。また研究分野にしても、厳格に専門領域だけに限るということはなく、広くお考えになっている先生も多いので、研究者の方々の希望に応じた受け入れをできるだけ実現していきたいと考えています。設備などハード面でも生活面でも、何かご心配なことがあれば、私たちもいつでも相談に応じる体制になっておりますので、多くの研究者の方々に本学に来ていただけたら幸いです」(石倉さん)。