Host Interview

あらゆる壁を扉に変える、先進性に満ちた学びの環境

お茶の水女子大学

OCHANOMIZU UNIVERSITY

日本初の官立の高等教育機関として創立されたお茶の水女子大学は、教育の理想を探求し続ける国立の女子最高学府です。小規模ながら人文社会科学・自然科学・生活科学の文理双方の分野をそろえた大学として、独創的で先進的な研究開発が行われてきました。歴史と伝統を礎に、日本の新しい教育と研究を推進する、お茶の水女子大学の先進性と多様性に満ちた学びの環境を紹介します。

 

女子教育の伝統を築いた、日本初の女子高等教育機関

 

 お茶の水女子大学の歴史は、1875年、東京女子師範学校が設立されたことに始まります。師範学校とは、小学校教員の養成を目的とした学校です。1890年に女子高等師範学校(中学校、高等女学校、師範学校の教員を養成)となると、日本初の女性のための高等教育機関として全国の学びを求める女性たちの憧れの的になりました。そして1949年、戦後の学制改革により、お茶の水女子大学が発足。女性が海外に出ることが困難な時代から140年以上に渡り、国際的に活躍する優秀な教育者、研究者を多く輩出してきました。

 お茶の水女子大学の教育の最大の特長は、少人数制による高度な教育課程です。 「学生と教員の距離が近く、一人ひとりの学生の個性を大切にしたきめ細かな指導がおこなわれています。学びの中で、学生も教員を訪ねてきますし、教員もそれに親身になって応えていこうとする。また、学生が真面目かつ熱心であり、教員のアドバイスを真摯に受け止め、一生懸命に実践するというのもお茶の水女子大学のいいところです」とお話ししてくださったのは、本フェローシップの受入窓口となる、大学院人間文化創成科学研究科の森山新教授です。海外の大学で日本語教育・日本語教育研究に携わってきた森山教授は、海外から帰国しお茶の水女子大学に赴任した当時、学生たちが日本の古きよき伝統を大切にしていることにも感銘を受けたそうです。「日本といえば、アニメや漫画などのサブカルチャーが注目されがちですが、日本舞踊、箏曲、百人一首、茶道、華道、弓道、能楽、狂言など、日本の伝統文化に取り組むサークル(大学公認団体)が多く、若い学生たちが今もこうした伝統文化に積極的に親しんでいることに驚きました」。

 キャンパスは、池袋、新宿、東京などの主要駅に近く、他の国立・私立の大学、教育研究施設が点在しており、研究には格好の立地です。敷地内には、大学のシンボルとなっているイチョウ並木、国の登録有形文化財に登録されている正門と大学本館、大学講堂、附属幼稚園があり、伝統的な趣に満ちています。そんな中、ひときわ近代的な建物は、2018年にリニューアルオープンした附属図書館です。70万冊の図書と1万1千タイトルの電子ジャーナル、語学学習用の教材や視聴覚資料、ジェンダー研究所や幼児教育など、特色ある貴重な資料を提供しています。

 

 

高い国際性を備えた人材育成を目指し、グローバル教育を推進

 

 2004年の国立大学法人化に際し、お茶の水女子大学は「学ぶ意欲のあるすべての女性にとって、真摯な夢の実現の場として存在する」という標語を掲げました。そして、発展途上国の女子教育への支援を行うとともに、グローバル時代を見据えた女性リーダーの育成に尽力。異なる文化と価値観を持った人々が、深く理解し合い、互いに切磋琢磨しながら成長できるよう、現在までに27か国・地域77大学との間で交流協定を結び、国を越えた学びを実現するための環境を整えてきました。

 学内では、英語による授業や留学生と日本人が同じ教室で学ぶ交流型授業、TV会議システムを使って海外の教室をつなぎ共に学ぶ国際合同授業、各種国際フォーラム、セミナーなどが活発に行われ、2017年度には約400名の留学生及び約50名の外国人研究者を受け入れています。

 本フェローシップの受入先となる、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科比較社会文化学専攻は、日本における第二言語としての日本語教育、習得・教育を牽引し、国内外の教育機関で活躍する日本語教育専門家を育成してきました。本フェローシップでも、主に日本語教育学を中心とした研究者を招聘しています。

「これまで受け入れを行った招聘研究者の方とは、院生と一緒にゼミに参加したり、国際合同授業に参加したりと、アットホームで密度の高い交流を行い、お互いにギブアンドテイクしながら学び合ってきました」と、森山教授。こうした交流は研究者同士にとどまらず、大学同士の国際交流協定を締結するなど、国際交流の促進にも寄与してきました。今後も本フェローシップを通じて、日本語教育研究のさらなる発展と、世界規模の交流拡大を期待しているそうです。

 

相互理解の手段としての外国語教育

 

 森山教授は、韓国の交流協定校との間で行われる「日韓大学生国際交流セミナー」、8か国の大学で結成された「多文化・多言語サイバーコンソーシアム」、世界の日本学研究の拠点大学から教員及び大学院生を招いて国際合同ゼミを行う「国際日本学コンソーシアム」を開催するなど、海外で日本語を学ぶ学生たちと積極的に対話を行う〝国際交流型授業〟に力を入れています。

「対話を行うことで、単に言語スキルを磨くだけなく、学生一人ひとりにインターナショナルアイデンティティを育み、本当の意味でグローバル時代にふさわしい人材を育成することを目指しています。TV会議システムを使った授業では、お互いに一番話したくないテーマ…例えば、韓国の大学と行った異文化理解の授業では、従軍慰安婦問題や領土問題についても話し合いました。各国の間にある様々な問題を、それぞれが学んだ言語を活用しつつ、対話によって解決策を模索するんです」。

 最近では、日韓両国の学生の間で、自分自身を振り返り、同時に相手にもインタビューを行い、それぞれが自身のアイデンティティや相手に対する他者イメージがどのように形成されてきたかを考察し合う授業を行いました。そして、生まれた時はニュートラルだったひとりの人間が、どのように日本人として、または韓国人として育ち、なぜ今日お互いに争っているのかを個人レベルで考察しました。

「かつて外国語教育といえば、文字通り言葉を教えることでしたが、国際的な交流が活発化する中で、求められる使命が変わってきています。私が強く感じているのは、外国語教育を通じて異なる他者と出会い、世界がともに生きる道を模索するようになったということです。言葉を学ぶことは、その国の文化を学び、理解することです。言葉を通じて他者を理解することで、私たちは自国中心的で排他的なアイデンティティをインターナショナルなものに変えていくことができるんです。そして対話することで、あるいは対話こそが対立を理解に変えていく唯一の手段です。外国語はその中でも最も大切なツールです。このように私たちは、単なるスキルとしての言語ではなく、異なる他者と自分とをつなぎ、ともに生きていくための日本語教育を目指していきたいと思っています。こうした日本語教育研究の未来に興味のある研究者の方に、ぜひお茶の水女子大学に来てほしいと願っています。そして、これからの日本語教育について、ぜひ私たちとともに学び合いながら考えていってほしいと思います」。

 

お茶の水女子大学
人文科学系教授
国際教育センター

センター長森山 新

DATA :
お茶の水女子大学
東京都文京区大塚2-1-1
http://www.ocha.ac.jp/

Host Interview

受入機関の紹介

研究者の皆さんは下記のいずれかの受入機関の協力を得て、研究を行います。各機関の担当者さまのインタビューをご紹介します。