広大なキャンパスと、個々の研究者に応じたサポート体制
京都大学の吉田キャンパスは、京都府内にある3つのキャンパスの中でもっとも古く、創設以来の歴史と伝統を感じさせる校舎が多数あります。正門を入ると、正面には白い文字盤が特徴的な時計台がそびえたち、その前には大学のエンブレムのモチーフとなっているクスノキの大木が、伸び伸びと枝を広げています。
時計台があるのは本部構内と呼ばれる一角で、西側の東大路通の向こうには西部構内、南側の東一条通をはさんだところに吉田南構内があり、それぞれに校舎や施設が点在しています。さらにそれらの外側には農学部等がある北部構内や医学部・病院・薬学部構内があり、広大なキャンパスはさながら一つの街のようなスケールです。広々とした敷地内では、学生や教職員が自転車で移動している姿がよく見られます。
「国際日本研究フェローシップの招聘研究者は、本学の大学院研究科や研究所に所属し、研究をされています。受け入れで多いのは人文科学研究所や、文学研究科、人間・環境学研究科などですね」と説明してくださるのは、京都大学企画・情報部国際交流課の矢野由佳さんです。「すべての招聘研究者に提供できる研究環境としては、学内の図書館を利用できるほか、学内ネットワークに接続・使用していただけます」。
本部構内の中央には、約100万冊の蔵書を有する附属図書館があります。京都大学には約50の図書館、図書室がありますが、附属図書館のデータベースで他の図書館にある図書、資料等を取り寄せることもできます。また1階にはグループワークやディスカッションができるラーニング・コモンズというスペースがあり、そこで若手研究者がミニ・レクチャーを行い、その場にいる学生や研究者と互いに刺激を与え合うようなシーンもあるそうです。3階にはAV資料を集めたメディア・コモンズのほか、複数人で落ち着いて議論ができる共同研究室、1人で集中できる研究個室もあります。
このほかの具体的な研究サポート体制は、受け入れる教員や研究室によりそれぞれ異なるということです。
「たとえばですが、研究室に席を設け、資料・パソコンを自由に使えるようにされていたケースもあります。また同じ研究テーマをもつ院生や教員が意見交換をする、希望に応じて定期的にミーティングや研究会参加を行う、地元の人へのインタビュー等で必要があれば通訳をつける、といった例もありました。基本的には自由に研究をしていただくという方針のもと、個々の受け入れ担当教員が招聘研究者の研究内容やそのときの状況に合わせて、必要な支援を行ってくださっています」(矢野さん)。
メディア・コモンズ
ラーニング・コモンズ
単身、夫婦で入居できる住まいがある「吉田国際交流会館」
一方、京都大学で過ごす生活は、どのようなものになるのでしょうか。
「文具などの買い物には、学内の大学生協の店舗を利用していただけます。招聘研究者も大学生協の組合員になれば、書籍については10%オフで購入ができます」と矢野さん。吉田キャンパスで店舗をもつ大学生協のうち、もっとも大きいのが西部構内にあるショップ・ルネ。ここでは1階がスーツや図書などを販売している広い店舗で、2階が食堂になっています。
また時計台に近い総合研究8号館の地下には、生協中央食堂があります。「ここは少し前に改装をしたばかりです。周りの人と食事時間が合わないときなど、1人で食事をするときにも気兼ねなく食べられるテーブルも多くなっています。このキャンパスには他にもいくつか学食がありますが、学食によって少しずつメニューが異なるので、食べたいものに合わせて色々なところを回るのも、学生や教員、研究者の楽しい息抜きになっているようです」(矢野さん)。
そして、外国人研究者や留学生の学内の住まいとなっているのが、吉田南構内にある「吉田国際交流会館」です。ここは2013年に設立された新しい建物で、居住者用の入り口はオートロックになっており、居室は単身用と夫婦用、バリアフリーの3タイプがあります。研究者用の居室は4階に単身用が16室、夫婦用が4室あります。各居室(研究者用)にはテレビや冷蔵庫、ベッド、机などの家具・家電がついていて、夫婦用には洗濯機もあります。また全室で無線LANが利用できます。このほか各フロアに共通の設備としてラウンジやリネン室、ランドリールームがあり、1年間など限られた期間でも快適な生活を送れる住環境となっています。
「ここは大学構内にあるため、研究などで遅くなってもすぐに宿舎に帰ることができます。研究や学習に集中できる環境ということで、研究者にも留学生にもたいへん人気があります。海外からの留学生や研究者が一般の賃貸住宅を借りるときには、保証人が必要になったり、ゴミ出しなどの生活のルールを覚えるのが難しいといった問題もありますが、ここではそうした心配もありません」と矢野さん。
吉田国際交流会館の入居期間は、1か月以上1年間まで。居室数に限りがあるため、希望された方すべてが入居できるわけではありませんが、本フェローシップの招聘研究者はちょうど条件が合うこともあり、入居の希望があれば受入の教職員を通じ申請を、と矢野さんは話します。実際に利用している招聘研究者もいらっしゃるということです。
トップクラスの研究者との出会いが、研究の刺激に
グローバル人材の育成や研究の国際化を推進している京都大学では、外国人留学生の受け入れが年間2000人以上、外国人研究者の受け入れも大学全体で年間1000人を超えています。こうした大学のグローバル化を支えているのが同大学の充実した事務組織です。
本フェローシップのような国際交流事業・助成に関する事務業務を行っているのが、矢野さんの所属する企画・情報部国際交流課です。また先ほどの吉田国際交流会館の中にある「国際交流サービスオフィス」では、日本に来る留学生や研究者、その家族のビザに関する業務、住まいの紹介などを行っています。
矢野さんは「招聘研究者の場合、国際交流サービスオフィスで行うのは日本に来るまでの手続きが中心です。京都で研究生活を始めてから、生活上でなにか困ったことなどがあれば、受け入れ担当教員の研究室や、所属する研究科の事務職員が近い存在となります。京都大学では、これまでにも多くの外国人研究者を受け入れてきた実績があり、受け入れ担当の教員や事務職員も、どういうフォローがあればいいのか理解していると思いますから、遠慮なく相談してみてほしいと思います」と話します。
また、京都大学で研究をすることの強みを、矢野さんはこう語ります。
「本学は日本を代表する総合大学ですので、世界各国からさまざまな研究をされている方々がたくさんいらっしゃいます。日本人ばかりという環境ではなく、周りに自然に色々な国の方々がいるということが、研究環境として優れた点の一つだと思います。また、京都は本学のほかにも大学や研究機関が数多くあります。そうした他大学、他の研究機関の研究者と積極的に交流できることもメリットでしょう。もちろん日本文化に興味を持たれている方にとっては、京都という歴史と伝統の息づく街で生活をすることも、興味深い経験になることと思います」
最後に、矢野さんにこれから本フェローシップに応募される海外の研究者に向け、メッセージをお願いしました。
「日本に滞在される1年間または6か月間、研究だけではなく、たくさん色々な経験をして日本を楽しんでください。皆さんにとって良い滞在となるよう受入れ機関としてサポートしていきます」。