世界の言語、文化、社会に関する教育の中心
東京外国語大学は、世界中の言語が研究・教育されている日本唯一の国立外国語大学です。日本における独立外国語教育機関の祖であり、1873年、官立開成学校(現在の東京大学)の語学過程を母体に設立された東京外国語大学を前身としています。直接の創立は、東京高等商業学校(現在の一橋大学)附属外国語学校として設立された1897年。2年後の1899年に東京外国語学校として独立しました。
「国立では唯一の外国語大学ということで、世界14地域、27言語の専門的な教育プログラムがあるということが大きな特長です。それぞれ定員は少ないのですが、インドネシア語、カンボジア語、ラオス語、アラビア語など、他ではあまり教えていない言語を教えています」と話してくださったのは国際日本研究センター長で、日本語学・日本語教育を専門とする坂本惠教授です。学部生たちは、これらの言語を英語、その他の外国語を組み合わせて高いレベルで習得した上で、歴史、経済、文学、人類学、国際関係など、さまざまな専門分野へ進みます。専攻言語には日本語もあり、外国人留学生と日本人学生がともに外国語としての日本語を学んでいます。
「現在、学内では79か国1地域から来た600人以上の留学生が学んでいます。学部とは別に『東京外国語大学留学生日本語教育センター』という日本最大級の日本語教育機関もあり、日本の国立大学に進学予定の国費留学生と、交流提携校の留学生、国費の日本語日本文化研修留学生、教員研修留学生などいろいろなカテゴリーの留学生を受け入れています」。
こうした国費留学生は、日本語の学習経験が全くないところから、わずか1年弱のプログラムで大学の講義を理解し、小論文やスピーチなどができる表現力を身につけます。
さらに2019年には、国際日本学部を新設。授業は英語、日本語の両方で行われ、言語運用能力を向上させながら、日本について総合的に学んでいきます。
3種類の食堂と売店があり、学生が憩い交流する場となっている大学会館
日本最大級の日本語教育機関、留学生日本語教育センター。さまざまなカテゴリーの留学生がここで日本語を学んでいる。
グローバルなキャンパスは小さな国際社会
世界79か国1地域からやってきた留学生が学ぶ東京外国語大学のキャンパスは、さながら小さな国際社会です。留学生と日本人学生が一緒に授業を受けたり、発表をする中で、考え方の違いや共通点を見つけ、お互いの文化を尊重しあう経験を積んでいます。
また、東京外国語大学の特長のひとつは、世界50か国の国や地域にある116の大学と協定を結び、交換留学プログラムを実現していること。言語能力を磨くため、約半数の学生が在学中に1年間の留学に出かけます。
「交換留学は、例えばタイ語を学ぶ学生がタイに留学すると、タイからもこちらに日本語を学びにやってくるんですね。日本で学ぶ学生にとっても、異文化コミュニケーションを体験できるよい機会になります。私は今、大学院国際日本学と留学生日本語教育センターで教えていますが、ここでは学生が10人いたら全員国籍が違うことも珍しくないんです。授業では、毎回『私の国はこうです』『私の国ではこうです』というディスカッションが積極的に行われています」と坂本教授。学生主体となって留学生と交流する「TUFS多文化交流」などの国際交流を目的としたサークルでは、金曜日のお昼休みに行われる多言語交流や、留学生の歓送迎会、ハロウィン、クリスマスパーティなど、1年を通して様々なイベントが行われています。また、学園祭『外語祭』では、さまざまな言語で行われる劇、料理、伝統芸能など、世界中の文化を体験できます。
国内外の研究者とともに国際的な日本研究を推進
招聘研究者の受け入れ先となる「国際日本研究センター」は2009年、日本語、日本語教育、日本文化・社会について総合的・複合的視点から研究し、教育面に反映・還元していくことを目指して設置されました。以来、世界の研究者を招聘し、日本における国際的な日本研究の推進、研究者同士のネットワーク構築に力を注いでいます。
「このセンターの教員には日本語学、日本語教育学、英語学、ドイツ学、インドネシア語学、ベトナム文学、中国近現代文学、トルコの歴史、国際政治学など、各国の様々な分野の専門家がいることが特長です。世界の諸言語、諸地域との比較対照研究などがしやすい環境ですし、以前、インドネシアからの研究者がいらっしゃった時には、インドネシア語を専門とする教員が伴走者となって、研究面でも生活面でもサポートしました」と坂本教授が話すように、担当教員をはじめ、センターのスタッフが招聘研究者をさまざまな面でバックアップしてくれます。なかでもセンターオフィスに常駐する「特定専門員」は、招聘研究者の日常の相談にも対応してくれる頼もしい存在。坂本教授によれば、招聘されてすぐに、部屋探しを一緒にしてもらった方もいたそうです。
招聘研究者は、様々な講演会や研究セミナーに参加し、希望があれば担当教員はもちろん、他の教員の授業やゼミの聴講なども可能です。
「実は先日、以前招聘された研究員の方に再会するという嬉しい機会がありました。受け入れた研究者の方々とは、これからも縁を途切れさせず、機会があればぜひセミナーやワークショップに参加していただきたいと思っています。新たな研究者の方々を受け入れることを、私たちも楽しみにしています」(坂本)。