Vol.83 |
2022.05.16 |
散歩のコトダマ
4月から週に一度、大阪の大学に教えに
いくようになりました。
前泊して、当日は90分の講義を2コマ。
ただ教えるだけでなく学内の会議や
学生の管理もあるのでハードです。
しかし、いざ始めてみると、すこぶる
体調がいい。
体脂肪が減り、筋肉量が増加しました。
健康診断の数値も軒並み改善されています。
よく眠れるので気分もいい。
当初は、緊張しているので疲労を感じない
のかな、と、思っていました。
しかし、ひと月続けてそうでないことが
わかりました。
好調の原因は、「歩くこと」でした。
コロナ禍の自粛生活で、足の筋肉が落ち、
体重が増加していました。
ところが大学に通い始めると、
広大なキャンパスをひたすら歩きます。
坂も多い。3階の教室まで、階段で
昇降します。
若者のテンポに合わせて、歩く。
キャンパスの芝生、美しい樹木、
学生たちの歓声を見聞きしながら歩く。
すれ違う学生に、
「こんにちは!」
と、声をかけながら、ひたすら歩く。
夜、歩数計を見ると、12.000歩くらい
歩いています。
鏡で顔を確かめると、うっすら日焼けを
しているようです。
「次の講義をどうしようか」と
思案しながらの散歩。
これがコロナ禍で錆びついた体に
油を差し、体に溜まった汚泥を
掃き出してくれるかのようです。
哲学者 西田幾太郎は、散歩を日課に
していました。
京都大学で教鞭をとる傍ら、ひたすら
歩いて思索に耽る。
彼の歩いた道は今、「哲学の道」と
称される観光スポットになっています。
歩いてみると結構な距離があります。
ここを日々早歩きすることで、西田幾太郎は
哲学を深めたのでした。
私もマネをして、かなり早足で歩きます。
縮んでしまった足の裏側を伸ばし、
足首に力を入れて歩きます。
スピードが出てくると、脳内のモヤモヤが
消えていきます。
頭が晴れてきます。
さらに進むと、心が空っぽになり無心の
状態に近づいてきます。
この無心、空っぽこそが、
「散歩」のコトダマなのでしょう。
ここ2、3年、出会ったことない
爽快なコトダマです。
すべての講義が終わって、夕方5時頃に
大学のバスに揺られて駅に向かう。
元気な学生たちの笑顔と、夏に向けて力を
帯びてきた夕日を浴びながら帰途に
つくとき、小学生の頃の下校時間にも
似た満足感で体が満たされます。
散歩のコトダマのおかげで、学生に戻った
ような気分に浸れるのです。
みなさんも歩いてみませんか。
薫風を浴びながら、少し早く、力強く。
きっと頭と体の霧が晴れてきますよ。