博報賞

第55回「博報賞」贈呈式・祝賀会報告

第55回「博報賞」贈呈式・祝賀会

日時:2024年11月8日(金)16:00~
会場:日本工業倶楽部会館(東京都千代田区)

日本工業倶楽部会館にて第55回「博報賞」贈呈式・記念祝賀会を開催いたしました。
贈呈式は厳粛な雰囲気の中、18組の受賞者様へ贈賞が行われました。
記念祝賀会は、立食パーティー形式にて開催。審査委員の先生方や参加者同士の活発な情報交換の場となりました。

戸田裕一理事長挨拶

第55回「博報賞」 贈呈式にあたり、ひと言ご挨拶申し上げます。
本日、多くの受賞者様、ならびに関係者の皆様にご出席いただけますこと、深く感謝申し上げます。
また、8名の審査委員の先生方をお迎えし、文部科学省から初等中等教育局 菅野和彦(かんの かずひこ)視学官のご臨席を得まして、ここに第55回「博報賞」贈呈式を執り行えますことは、誠に意義深いことであると存じます。

「博報賞」は、児童教育現場の活性化と支援を目的として、当財団設立とともにつくられました。
日々、教育現場で尽力されている学校・団体・教育実践者の「波及効果が期待できる草の根の優れた活動と貢献」を顕彰しております。
「ことばの力を育むことで、子どもたちの成長に寄与したい」そんな想いを核として、子どもたちの豊かな人間性育成を祈念し、支援を続けて参りました。

さて、今日の教育を取り巻く環境を拝見いたしますと、「個別最適な学び」「協働的な学び」など、新たな学びの実現に向けた様々な取組がなされる一方で、年々増え続けている不登校児童生徒の問題や、海外にルーツを持つ子どもたちへの対策、あるいは、ICTを取り入れながらの実践活動も加わり、教育現場の先生方の繁忙さは、さぞ大変なこととご推察いたします。そのような多忙な環境下でも、個人・団体でアイデアを出し合い、活動の継続や、新たな取組をされている数多くのご応募・ご推薦を賜り、審査委員の先生方による厳正・的確なご審査を経まして、8件の博報賞および、6件の功労賞、4件の奨励賞を贈呈する運びとなりました。
ご応募・ご推薦いただきました皆様に対し、また、審査、選考の労をお取りくださいました審査委員の先生方に対しまして、改めて厚く御礼を申し上げます。

ご受賞者の皆様方、お一人お一人の多大なるご尽力と貢献に微意を表しますために、正賞としての賞状と、些少ではございますが、副賞をお贈り申し上げ、顕彰させていただきたいと存じます。
本日ご受賞の皆様方と関係者の皆様方におかれましては、ご健康にご留意いただき、皆様方の後に続いて活躍される、数多くの教育者の良き先達として、また、子どもたち一人ひとりの笑顔と未来のために、今後益々のご活躍を祈念いたしまして、ご挨拶といたします。

成田信子 審査委員長 國學院大學教授
審査経過報告

第55回「博報賞」には、全国都道府県の教育委員会をはじめ、児童・生徒の教育に携わる多くの有識者の皆さまから、61件のご推薦・ご応募を賜りました。
本年8月に審査委員会を開催し、皆さまの取組を一つ一つ充分に時間をかけて、慎重に審査させていただきました。
その中から、子どもたちの主体性を引き出し、「教育実践の活性化」を果たしている先駆性・独創性のある取組で、なおかつ「波及効果が期待できる草の根的な活動と貢献」として、8件を博報賞に選出いたしました。
また、功労賞6件と奨励賞4件を選び、正式決定とさせていただきました。
次に、文部科学大臣賞について申し上げます。博報賞受賞者の中から、山口県 下関市立本村(ほんむら)小学校 様「平家踊りの伝統を受け継ぐ ~コミュニティ・スクールの仕組みを活用して~」を文部科学大臣賞にご推挙させていただきました。

コロナ騒動もひと段落し、実践活動が本格的にフル稼働し始め、応募資料作成に割く時間がなかったのか、今年の応募件数は昨年と比べ21件減少しました。とはいえ、応募活動の中身はどれも素晴らしく、以前の受賞活動とも比較しながら厳格なる協議を重ね、先にご紹介した受賞件数となっております。過去の受賞関連者からの応募や、熱心な教育委員会の方々からも継続応募をいただきました。また、昨今、応募のなかった都道府県には、財団から教育委員会の方々に直接アプローチさせていただき、ご応募に繋がってもいます。今後、更なる素晴らしい教育実践活動の顕彰、波及効果の拡大のために、「博報賞」を広く知っていただき、各関係機関にもご協力をいただきたいと存じます。今回の受賞で終わりではなく、今後とも引き続き皆様からのご支援をいただきたく、この場でお願い申し上げます。

簡単ではございますが、審査の経過報告といたします。

次に、せっかくの機会ですので、博報賞の審査を通じて感じた子どもたちが物事を創造する―創り出す力について述べたいと思います。

これだけ情報があふれている社会で、なにかを生み出す、創り出す、創造の力というのはますます大事になっていると感じます。博報賞の審査の過程でも、当該教育活動に子どもたちの発想や考えが生きているのか、が大変重要視されています。子どもたちの発想や考えと申し上げましたが、もちろん教員や地域の方々、社会的な活動をしている方々の思いや考えも大事です。例えば総合的な学習の時間においてそれまで各学年で核になるような活動が受け継がれている場合に、そのまま無条件に継続するものだと決めてかかっていないかと振り返る必要があります。近年の応募のなかで優れた実践には、単元や活動の意味を子どもに問い返し、子どもの発想を引き出すところがありました。
少し大きな枠組みの話になりますが、それは伝統と創造ということにつながると思います。
地域や学校でずっと受け継がれているもの、例えば祭り、例えば文化行事というようなものは受け継がれる意味があると思うのです。ただ今まで通りにやるというのでは、おそらくなん百年も生きて続くものにはなりません。常に新しい創造、どうしてそうなのかという問いがあってこそ、次世代につながっていくと思います。

例を身近なところに移して、言葉の問題で考えてみます。私は大学で教鞭をとっておりますが、若い世代の言葉の使い方にとまどうこともあります。
「大丈夫です。」という言い方を皆さんはどんな意味で使いますか。従来の用法ですと、「寒くありませんか」「大丈夫です」という使い方だったと思います。ここには「寒くないから大丈夫」という意味が含意されています。ところが何年か前から別の使い方を耳にするようになりました。「お水を飲みますか」「大丈夫です」というようなやりとりです。ここには「飲む必要はない」というような意味が含意され、婉曲に断る言い方に広がって使われていると思います。ただし両者には「自分はこのままでよい」という意味が居映しています。新しい使われ方を耳にするようになったとき、はじめは意味はちがうなあと思ったものでしたが、今ではふと自分も例えば「車で送りましょうか」「大丈夫です」などと言ってしまう場面がありそうにも思うのです。もちろん意識的にその使い方はしないという選択もあるでしょう。話は遠回りしましたが、なぜそれが使われるのか、どんなときに使われるのかなど考え考え、慣用化していくこと。これも創造のひとつといえるのではないでしょうか。
子どもたちが考え考え、どうしてか、どうすればよいのか、と立ち止まる時間があるかどうかが大事です。新しい教育活動を生み出すのは、こうして今までのものを受け取り、教師も子どもも地域の方も考えて次を創り出す力だと思います。創造の力に期待したいと思っています。

本日は、栄えある博報賞のご受賞、誠におめでとうございます。
以上をもちまして、審査経過の報告、ご挨拶とさせていただきます。

    文部科学省 初等中等教育局 菅野和彦 視学官 文部科学大臣 祝辞 代読

    各賞 賞状贈呈

    受賞者代表挨拶

    祝賀会