Vol.105 |
2024.03.15 |
「あいさつ」のコトダマ
大学生の頃、私は、クイズの問題を作るアルバイトをしていました。
NHK「クイズ面白ゼミナール」という番組で、最高視聴率は、42.2%
(1982年9月12日)。人気の秘密は、ベストセラーを連発していたアナウンサーの鈴木健二さんの言葉の力によるものでした。
ある朝、私がオフィスに入る時、寝ぼけた小さい声で「おはようございます・・・」
と言いました。
すると、大きなテーブルに座っていた鈴木さんが、私にこう言ったのです。
「挨拶という字を知っていますね。挨拶の『挨』も『拶』も、『押す』、『迫る』、『開く』という意味があるんです。挨拶はね、相手に負けないように、その場の空気に呑まれないように、大きな声で「押し迫る」意味があるんですよ」
と私を諭してくれたのです。
「おはようございます」という挨拶の言葉は、ただの社交辞令ではない。自分の存在意義を明確にするための武器である。
「ちゃんと挨拶をしろ!」
と叱るのではなく、挨拶の意味や効用について、おだやかな声で教えてもらった。この教えのおかげで、私は就活も優位に戦うことができた。挨拶で、場を支配する。これは、一生の宝になりました。
大きな声で「おはよう」と挨拶をする。
言うのは簡単ですが、日常生活に取り入れるのはかなり難しいものです。普段、ろくに挨拶をしていない人間が、突然「おはよう!」と大きな声で言った。
「どうしたんだ、急に?」
「何か、無理してない?」
という親や周囲の反応が返ってくるのは、まず間違いないでしょう。相手は、大きなあなたの挨拶で、「この場を支配される」と警戒感をもつものです。
しかし、心配することはありません。1週間、ひと月と続けていくうちに、相手は警戒心を解きはじめます。同時に、あなたに対して「元気がいい」「いつもポジティブ」と好感を持つようになります。あなたが学校を休んだとき、あなたの挨拶がないことに寂しさを感じてくれる。「おはようございます」としっかり言うだけで、あなたは「上機嫌な人」という印象を与えることになっていくのです。
それでは、効果的な挨拶の仕方を教えましょう。
簡単です。それは、目線をあげることです。
少しだけ目線を上げて、上を見るくらいで十分。こうすることで喉の気道が開いて、声が通りやすくなります。下を向いてこもった声で挨拶するのとでは、伝わり具合が違います。あまり上げすぎると「上から目線」で言ってるように見えるので注意してください。
そしてもうひとつは、「自分から」言うこと。
「しぐさ研究家」の伊勢田幸永さんによれば、会話は、先に声を発した人が主導権を握りやすいそうです。はじめは恥ずかしいかもしれませんが、人が集まったとき「おはようございます」「こんにちは」とまず声をかけるのは自分!と心得ましょう。これだけで、積極的な人間に変わっていくことができます。
今は、「あいさつ」を交わすことの多い季節です。まずは自分から。目線をあげて、大きな声で「おはようございます!」と言ってください。「あいさつのコトダマ」が、あなたを必ず守ってくれます。誰にも好印象を与えるあなたに変えてくれます。
さぁ、大きな声で言ってみましょう。
「おはようございます!」