活動内容
読字支援システムの導入による、文字を読むことに困難を抱える子どもの早期発見・対応と困難さの軽減
「計算はできるが文章題が苦手」「長い文章が読みにくい。時間がかかる」など、読みの困難さは学習全般の学びにくさとなって現れることが多い。中学年以降で顕著化しやすい集団不適応や逸脱行動も、この学びにくさが原因となっている場合が少なくない。こうした実態から、鳥取大学で研究されている「RTI(Response to Instruction=指導に対する反応)モデルを用いた読字支援システム」を導入し、1年生を対象に客観的なデータと適切な個別指導・工夫した授業により、文字を読むことに困難を抱える子どもの早期発見・対応を行い、困難さの軽減や学ぶ意欲の向上を図ろうと考えた。
本実践は各学期末に1回、子ども一人一人のひらがな習得の実態を正確に把握し、読みに困難さが見られる場合は長期休業を利用して、保護者によるデコーディング(文字・音変換)指導を個別に行い、1年生修了時までに特殊音節を含む107文字すべてを正確にスムーズに読める力をつけることをめざすものである。①読む力の正確な実態把握と、デコーディング指導でグレーゾーンの子どもの力を伸ばす。②グレーゾーンの減少で本当に支援の必要な子どもが精査され、より個に応じた支援が可能となる。③保護者を指導に巻き込むことで、困難さに対する共通理解ができ、学校とともに支える関係が生まれる。④学級全体の語彙力が向上し、活発な授業が展開され、子どもの主体的な学びが増える。⑤学級担任の日々の授業中で「ひらがなの読み」や「ことば」を意識した実践が行えるようになる。などの成果が期待された。
授業改善や保護者連携等の取組みの充実により、実践開始から2年目以降は毎年、単音(清音・濁音・半濁音・拗音)習得率100%となった。基礎となる学級における国語の授業の充実・改善を図ることで、支援を要する児童のみならず、すべての児童の読み能力の向上や授業の活性化につながっている。教師は子どもの読む力に対する評価を自らの指導の振り返りと捉え、授業研究や情報交換によりスキルアップを図っており、保護者も我が子に積極的に関わることで困難さを理解するなど、教師や保護者の変容もみられるようになった。
【写真】
短文作りを活かした拗音カルタ
審査委員より
発達障害のある児童が在籍する可能性もある小学校1年生に、国語の一斉授業、拗音等も含めた読み書きの確かな習得を、RTIという近年の学術研究に裏付けられた手法で取り組み、一定の成果を挙げた。その際には、地元の鳥取大学の教授からのスーパーバイズや、保護者との連携にも努めながら取り組んだことも貴重である。
プロフィール
島根県 松江市立雑賀小学校(まつえしりつさいかしょうがっこう)
【代表者】
北尾 浩之 (きたお ひろゆき)
【役 職】
校長
【創立】
1873年4月20日
【学校(団体)規模・活動参加人数】
○児童・生徒数 : 243名 ○クラス数 : 14 ○指導者数 : 22名