博報賞

活動タイトル

主体的に学び、自力で読める児童を育む文学単元の創造

横田 経一郎

国語・日本語教育部門|-| キーワード:読む力/読解力千葉県
横田 経一郎

活動内容

汎用的な読む能力の獲得や主体的な学びが育つ文学単元の開発と、啓発・還流活動

 言語活動を通した学習において、もっと純粋に読書に浸る「読む愉しみ」の学習の充実を図りたい、その結果、児童にどのような学力が形成されるのか明確にしたいとの考えから、文学単元の授業改善に取り組んだ。
 児童が見通しをもって主体的に学び、豊かに語り合い、進んで本に手を伸ばす姿を実現する単元をめざし、「作品の構成や評価を吟味しながら読み浸り、汎用的な読む力が定着する展開」(愉しむ読み)を開発。まず問題意識をもたせるために「なぜ文学作品を読むのか」という構えの形成を重視し、作者が作品を通して伝えたいメッセージ(=「作品の心」)を精一杯受け取ることを強調した。それは読むたびに変化し、個々により異なるので、何度も読み、何度も仲間と語り合うことを通して、読むこと自体の愉しさを実感させる。そして読むたびに教師の発問や指示に頼らないように汎用的な読み方を明らかにし、自問自答できる児童に育てたいとの願いから、①読みの構えの形成②着語読み③リーディング・チャット④「作品の心」をとらえるための個人思考⑤「作品の心」の交流⑥「キー発問」による対話⑦「作品の心」の決定とカンファランス、という基本の流れを開発した。
 次に「作品の構成や表現の評価を表現につなげる言語活動」(役立つ読み)では、個々の豊かな読みに基づいた言語活動を設定することで、児童は読むことの有用性を実感し、本に手を伸ばすようになり、また言語活動を通して生活に役に立てることができる思考力や表現力が育っていくようにとの願いから、絵本を活用した連続型テキストと非連続型テキストをつなぐ言語活動・出版学習による理解と表現をつなぐ言語活動と構成や表現の効果をもとに創作につなぐ言語活動を、それぞれ開発し実践した。
 こうして開発された単元は、研究会における提案授業公開、自主研修組織によるリーダー層や若年層教員の育成を通して、また、研究会講師を通して活発に啓発・還流され、域内の国語教育の活性化、国語教育の次期リーダー層の育成につながっている。

【写真】
「作品の心」を巡ってカンファレンスをする児童



審査委員より

汎用的な能力を重視しつつ読書活動をアイディア豊かに工夫して、楽しく力のつく文学の学習指導の開発に長年取り組むとともに、校長である現在も飛び込み授業などを行い、新しい実践に挑戦していることが高く評価された。県内外で講師も数多く務め、自らも研究会を持って地域の国語教育の発展に貢献している点も評価された。

プロフィール

千葉県 横田 経一郎 (よこた けいいちろう)

【役 職】
富津市立天神山小学校 校長