活動内容
邦楽教育を通して尼崎に美しい自然と文化的な賑わいを取り戻し、命の尊さや豊かな心を育む
古の尼崎は豊かな自然に恵まれ、地域には日本的自然観から生まれた文化が発展し、受け継がれてきた。これからの時代を生きる生徒に、自分たちが生活する地域を持続発展させ、より良く生きる力を身につけさせたいと考えた。また、音楽科の教師として邦楽の魅力を広めるために、いち早く箏曲を授業に取り入れ「心を育む邦楽教育」を目指した。
活動の充実を図るために、我が国の伝統音楽の歴史、自然観から生まれた心を学び、道徳や総合的な学習の時間と連携して取り組んだ。自分たちの住む尼崎のことを知るために尼崎の歴史や文化を学び、また、自然体験や環境保護活動にも取り組み、邦楽を生み出す豊かな自然観を学ぶなど、音楽と様々な分野の教科とのつながりをもたせ、系統的かつ計画的な学習活動を行った。大学や専門家の協力を得て、箏の基本的な知識、技能を身につける工夫をした。また、学校間の連携した学習活動や呈茶会、フォーラムを開催し、興味関心を高めるための取り組みを行った。心を育む邦楽による実践教育として、“ほんもの”と生徒をつなぐ邦楽鑑賞会を毎年実施。我が国の伝統音楽の学習に興味関心の高い生徒に対して、市内中学校有志による合奏団を結成し、より高いレベルの演奏技術の習得と、演奏の機会を与えている。指導者の資質を高めるために、尼崎市中学校音楽科教育研究会で教材や指導法の研究推進にも取り組んでいる。
結果、授業においては協調性が向上し、言語や文章から豊かな感性が育まれていることがわかる。音色を追求する中で、観察力、表現力、工夫する力が芽生え、やさしさや思いやりの気持ちが、ことばや行動にあらわれるようになった。また、規範意識が高まり、忍耐力が付いてきた。兵庫県中学校総合文化祭や尼崎市立中学校・高等学校合同音楽会への出演に際して、生徒たちは堂々と演奏し、合奏の喜びを体感し、感動を味わうことができ、兵庫県知事賞や優秀賞を受賞するなど、今後の活動の励みとなった。中学校卒業後も高等学校で邦楽を学び、継承に取り組む生徒も増えてきている。
【写真】
総合的な学習の時間と連携した「心を育む邦楽教育」
審査委員より
音楽教育全体との調和を図りながら邦楽教育に取り組み、市全体での邦楽教育を大切にした音楽教育の推進に尽力されている。邦楽音楽を通じて、地域の本来持つ豊かな自然と人間のつながりに気づかせたいという願いが、生徒たちに伝わっている。音楽だけではなく関連する教科や道徳での指導が効果を上げているといえよう。
プロフィール
兵庫県 坪井 美津子 (つぼい みつこ)
【役 職】
尼崎市立成良中学校 教諭