博報賞

活動タイトル

俳句づくりによる言語活動の充実

西田 拓郎

国語・日本語教育部門|-| キーワード:表現力/創造力岐阜県
西田 拓郎

活動内容

自己表現としての俳句創作指導への転換と、発達段階に応じた系統的な俳句創作指導の確立

 学校教育においては、伝統的な言語文化である俳句をつくらせてはいても、つくり方を教える学校は少ない。また、コミュニケーション活動としての俳句の価値を活かしきれていないなどの課題意識から、小学校低学年からの系統的な俳句創作指導の創出と実践を始めた。
 岐阜県内の小・中学校の国語科教師として、長年にわたって継続的に俳句創作指導実践を積み重ね、言語の教育としての系統的で具体的な指導のあり方を研究・開発してきた。それにより、どの学校のどの教師も俳句創作指導ができるようになった。また大垣市ではこの成果を元に、特別の教科「ふるさと大垣科」を創設し、学校教育を始め、市をあげて俳句づくりに取り組むなど広がりをみせている。
 管理職として赴任した各学校では、学校ぐるみで俳句による表現活動をさかんに行い、文字言語としての交流のみならず、音声言語として句会の形式を取り入れることによってコミュニケーション教育としての俳句づくりを実践し、お互いのよさを生のことばで認め合うようにした。校長として赴任した恵那市の小・中学校では、伝統的に行っている「ふるさと学習」の内容や体験を俳句で継続的に表現し、それを仲間同士で発表しあったり、地域に向けて発信したりすることによって、そのよさや感動を深められるようにした。また、家庭や地域にも俳句創作のたのしさ、おもしろさを広めるために、学校が中心となって地域ぐるみで俳句づくりを体験し、ふるさと句集「ささゆり」を発行するようになった。こうした活動は国語教育全国大会や県内外の講習会・研修会で数多くの講演および実演がなされている。著作の需要も多く、版を重ねている。
成果としては、音声言語によるコミュニケーション活動としての俳句の本質を大切にすることで、俳句を喜んでつくる子どもが増えた、俳句づくりを取り入れることで文化的でうるおいのある地域コミュニティとなった、俳句づくりを取り入れた効果的な言語活動を行う学校・地域が増えたことなどが報告されている。

【写真】
自慢の俳句を書いた短冊を持つ串原小・中学校児童生徒



審査委員より

俳句の創作指導に長年取り組み、創意に富む方法を工夫するとともに、俳句エッセイなど新しい実践も開発して、その成果を全国に発信するなどの取り組みが高く評価された。また、俳句コミュニティの発想による学校経営も独自な取り組みとして評価された。県内外の研究会、学会などで講師などを務め、俳句創作指導の普及に貢献している。

プロフィール

岐阜県 西田 拓郎 (にしだ たくろう)

【役 職】
恵那市立串原小・中学校 校長