活動内容
国語科の学習内容に興味と意欲を持たせ、子どもたちの生の声を学習課題として設定することを起点に互いの意見が響き合う場を実現し、主体的な学習態度を育てるとともに、一人ひとりの読みを深め広げることを目的として実践研究を続けている。児童・生徒の国語嫌いは、学年が上がるにつれて増す傾向にある。「面白そうだ、詳しく読んでみたい、読まなければ」といった文章を読む興味や必要性・必然性を持たせて学習する授業を組み立て、実践しようと心がけてきたのは何より「国語の授業は楽しい。」と感じてもらいたかったからである。この「楽しさ」が読解力向上の鍵となった。
まず、「児童の意欲と指導内容が合致した言語活動の設定の工夫」を行った。文や文章から学ぶことが難しい入門期や低学年の指導では、遊びと学びをつなぐ工夫を多く行ってきた。また、中・高学年の指導では、児童の思いや感動を受け止め、話し合いや作品制作などの言語活動を通して、ことばや文の持つ力、またその意味や作者の思いに気づかせて学びを深めてきた。同時に中・高学年では、児童の感想や意見から出た内容を学習課題としてきた。課題は児童の話し合いで決めるが、教師は児童の思いが生かされた課題が設定されるように支援する。この場合、教師の深い教材分析があって初めて、児童の意欲と指導内容が合致した課題が設定されることになる。
意見を交流する学習では、「場の設定、話題の焦点化、二次課題の設定、意見の交流による考えの深化・拡充」を図ってきた。グループでの話し合いをいかに主体的かつ効果的に行わせるかが、いつも苦労する点である。そこで、「話し合いの進め方」のマニュアルを作成したり、個々の考えを話し合いに生かす指導の工夫を行ったりしてきた。グループの意見を全体の話し合いの場に持ち込む場合、視点を決めて話し合うことが最も重要である。意見の分類、対比、位置づけなどをして視点を決め、目的に向かって話し合いを進めると、二次課題が生まれてくる。このようにつくり上げる話し合いの場で、児童は生き生きと意見を交流し、考えの深化・拡充がなされる。
今年度は、教師の授業力の向上を図るために「学びのサイクル」の理論を打ち出し、校内の先生たちに「コアティーチャー」として解説し、読解力向上の指導法を広げている。今後、授業実践を行う中で、多くの先生方とともに児童が意欲を持って学んでいける指導の在り方をさぐっていきたい。
【写真】
遊びと学びをつなぐ ―「大きなかぶ」の劇をつくる活動―
審査委員より
国語科における読解指導について、児童の意欲を重視しながら、学習過程を一定のサイクルとして確立した。言語活動を取り立て、それらを活用することによって、教師側からも学習者側からも着実な学習指導が行えるように工夫してきた。長きにわたる取組と研究成果の発表が際立っている。
プロフィール
福井県 稲葉 久子(いなば ひさこ)
役 職:福井市日之出小学校 教諭、研究主任、コアティーチャー