活動内容
「働く体験」を通して、将来の職業選択の幅を広げ、地域を支えていこうという気概を育む
少子高齢化、産業や経済の衰退などによる若者流出の課題を抱えている大館市では、大館の未来を切り拓く人材育成を目指し「大館盆地を教室に、市民一人ひとりを先生に」をコンセプトに、校種の枠を超えた連帯、産学官民の連携による「ふるさとキャリア教育」を進めている。
市内の小・中学校では、総合的な学習の時間等の一環として職業体験を実施している。しかし、学校ごとの取り組みでは、学校で定めた日程でしか実施できず、体験可能な職種と職場に限りもある。一方、地元企業は、人材不足などの課題に具体的な対策が見出せていない。そこで教育研究所内に「子どもハローワーク」を開設し、相談員、キャリア教育コーディネーターを専任職員として配置した。企業の都合に合わせた日程設定ができるため、タイアップ企業も増え、土日や長期休業日ならではのプログラム実施も可能となる。子どもたちは興味のある体験に何度でも申し込むことも、いろいろな職種を幅広く体験することも可能である。全小・中学生に「キャリア・パスポート」を配布し、体験の履歴を記録していくことで、興味・関心や得意なことなど、意識していなかった「自分の姿」に改めて気づくことができる。
受入企業の確保、キャリア教育支援のネットワーク、専任職員の雇用、募集から体験までのシステム構築、情報発信などが活動の成功を支え、教育面のみならず地方創生の面でも評価されている。
子どもたちは体験を通して、プロの仕事の厳しさや工夫、努力に驚き、先人の知恵に感心し、働くことの責任の重さや憧れ、尊敬の念をもつ。活動の場が学校から地域に移ることで視野や価値観を広げ、社会人として必要な力に子どもたち自身が気づくきっかけにもなる。また、大人に認められ、感謝されることで自己肯定感を高め、市民意識も育っている。子どもを受け入れる企業にも、地域の一員として子どもたちの人材育成に携わることが嬉しいなど、学びや社会貢献の喜びが伺え、地域がともに学び、ともに育つ環境ができつつある。
【写真】
技を伝える大人の本気と子どものやる気(木材加工)
審査委員より
土曜日や日曜日、長期休業日を利用した自主的な活動を支え、「働く体験」を豊かに展開する「子どもハローワーク」は、ふるさとのよさに気づき、働くことの意味や価値を考え、未来の担い手を育成することにつながっている。地域が一体となって市内の小中学生を育成していこうとするシステムは、他の地域のモデルとなる取り組みと考えることができる。
プロフィール
秋田県 大館市教育研究所(おおだてしきょういくけんきゅうじょ)
【創 立】
1989年
【学校(団体)規模・活動参加人数】
○職員数 : 14名
○活動参加対象人数 : 市内小学校17校(3,336人)、中学校8校(1,642人)
*2015.4.1現在