博報賞

活動タイトル

LD等の発達障害通級対象児への教育的支援

今西 満子

特別支援教育部門|-| キーワード:障がい理解推進/心のバリアフリー奈良県
今西 満子

活動内容

「ステップルーム」を先駆的に立ち上げ、子どもたちに必要な居場所をつくり、保護者へも理解を広げた

 小学校通常学級担任として教員生活をスタートし、その後、特別支援学級担任となり、初めて障害児教育を学び、生活単元学習中心に児童に寄り添う特別支援学級の学級経営を行ってきた。
 2004年より、特別支援学級担任の立場から、通常学級で学ぶ特別なニーズのある児童の支援の必要性を痛感する中で、通常学級でもなく、特別支援学級でもない、第三の教室としての「ステップルーム」という支援の場を奈良市立鳥見小学校内でスタートさせた。この取り組みは、奈良市、奈良県内では初の試みとして実践を行ったものであった。
 「ステップルーム」は、当時注目すべき先駆的な取り組みとして、奈良県内ばかりでなく近隣の府県から視察が訪れるなど貴重なものとして話題になった。通常学級で支援の必要な子どもたちは、それまで居場所がなかったが、ステップルームでSST(ソーシャルスキルトレーニング)を受けることにより、自分の居場所を見つけて自尊感情を高め、対人関係のノウハウを学び、通常学級で安定した生活を送れるようになっていった。子どもたちの変容を見た通常学級の教員や保護者は、ステップルームの取り組みを理解し、ステップルームで学ぶことを希望する保護者と子どもが増えていった。
 このステップルームの取り組みを基に、2007年に県内初のLD、ADHD等発達障害通級指導教室が鳥見小学校に開設された。その最初の担当者として奈良市および奈良県内の発達障害支援の通級指導教室の実践をリードし、その後2014年より鳥見小学校校長として勤務。校長の職にあるが、保護者からの相談に丁寧に対応し、子ども一人ひとりに応じた支援を常に探究する姿は、発達障害教育のみならず、教育者としての模範となっている。特別支援教育研究センターの客員准教授として位置づき、多くの研究会、講演会講師を務め、大学との共同研究、共同執筆による書籍の出版など、その活動は特別支援教育関係者に多くの影響力を与えている。

【写真】
「お店屋さんごっこ」スケート学習に持っていくお菓子を買う練習



審査委員より

発達障害への注目が始まった時期に、特別支援学級の担任として学級の弾力的運営に着目し「ステップルーム」を先駆的に立ち上げた。また教育センター指導主事、校長として、長年にわたり指導実践や研究活動、成果の公開を行い、ソーシャルスキルトレーニングを基本に保護者支援やティームティーチングを軸とする教育体制の構築に尽力した。

プロフィール

奈良県 今西 満子(いまにし みつこ)

【役 職】
奈良市立鳥見小学校 校長