活動内容
埼玉県ではノーマライゼーションの理念に基づく教育を推進する制度の一つとして支援籍に取り組んでいる。支援籍とは、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が一緒に学ぶ機会の拡大を図るために、在籍する学校以外に置く本県独自の学籍である。
本校では、今年度13名の児童生徒が毎月1~2回、地元の小中学校に通っている。本校の支援籍学習は、「〇〇ちゃんを迎える会」などの交流行事ではなく、通学班で登校し、業前活動と朝の会に参加する約1時間の「朝の活動(集会活動や運動、絵本の読み聞かせなど)」を中心に取り組んでいる点に特色がある。朝の活動に取り組む理由は、?通学班での登校や朝の会での呼名がお互いの仲間意識や所属感を生むこと、?子ども同士が自由に触れ合ったりお互いに声を掛けあったりする時間があること、?毎回、同じ学習活動に繰り返し取り組むことで本校児童の見通しが持ちやすいこと、?活動にメリハリがあり集中して取り組めること、?支援籍学習を終えてから特別支援学校に移動しても引率教員も本児も本校の始業時刻に十分に間に合うため、学校の授業への支障はほとんど無いこと、などが挙げられる。
支援籍学習に参加する本校の児童生徒の成長として、周囲の状況に応じて自分で判断して行動できるようになってきたことがある。例えば、朝の運動や集会の整列の時、周囲の様子を注意深く見て自分の並ぶ位置を確かめたり、自分から進んで行動したり挨拶したりするなど積極性が現れてきた。一方、小中学校の児童生徒にも、自分たちのクラスの一員という仲間意識が育まれており、障害のある友だちに対して、お世話ではなく自然な優しさをもって接する姿が見られるようになってきている。
「支援籍学習を始めてから街で声を掛けてくれるようになった」という保護者の言葉も数多く聞かれる。本校の支援籍学習の取り組みが、子どもたちの「共に生きる仲間」という関係を育み、共生社会の実現に向けた確かな一歩になることを願ってやまない。
【写真】
児童朝会で楽しくダンス。友だちのまなざしも温かい
審査委員より
特別支援学校に在籍する児童生徒の籍を、居住地近くの小・中学校におく「支援籍」は「心のバリアフリー」構想として最も進んだインクルーシブ教育の先導モデルといえる。単なる交流行事ではなく、「小学校の朝の活動」を上手に通常の教育活動として位置づけ、ていねいに自然な形での展開に取り組んでいる点など、非常に優れた教育実践である。
プロフィール
【創立】
1978年
【団体の規模】
・名児童・生徒数:238名
・クラス数:49
・指導者数:115名