校内フリースクールと夜間学級による長期欠席対策とその理念の展開と進化
岡崎市小中学校現職研修委員会 長期欠席対策部会
独創性と先駆性を兼ね備えた教育活動|奨励賞| キーワード: |愛知県活動内容
市内全中学校に校内フリースクールと夜間学級を設置して不登校の児童生徒を支援
愛知県岡崎市教育委員会は、2020年度から増え続ける不登校児童生徒の問題に対し、本格的な取組を始めました。「子どもを学校に適応させるのではなく、学校が子どもに適応する」という理念を掲げ、まず、市内3つの中学校に校内フリースクール「F組」を設置し、学校生活に悩みを抱える生徒が安心して過ごせる居場所を、学校内につくりました。その設置数は徐々に増え、2023年度には市内全中学校に拡大、今年度からは市内小学校3校への設置に取り組んでいます。また、昨年度からは夜間なら通学できる生徒のために夜間学級「S組」も試験的な設置を開始しています。
F組を運営するにあたっては、経験豊富な教員を担任として配置し、さらには市独自の予算で支援員を配置することで、活動を継続していくための実施体制を構築してきました。
活動を通して、心理的な安全性が確保された環境下で、自己決定や小さな成功体験を積み重ねた結果、児童生徒が自己肯定感を高めていく姿が見られるようになっています。また、長期欠席児童生徒に「ネガティブな印象」を持っていた教師たちのまなざしが変わり、「専門的で個別最適化された学びを創出する場」としてF組を捉えるようになりました。その影響は他の児童生徒にもおよび、誰にでもその人なりの事情があるという前向きな相互理解が広がりつつあります。
【写真】
保育園実習での成功体験が自己肯定感を高める
審査委員より
増え続ける不登校児童生徒の問題は、大きな社会問題となっています。しかし、教職員の不足や長時間労働問題の深刻化も壁となり、本腰を入れられない自治体も少なくないです。そんな中、岡崎市教育委員会が、独自予算を確保し、経験豊富な教員をF組の担任に配置するなど、自治体ぐるみで本格的な取組を開始したことには大きな意義があります。刮目すべきは、全校の児童生徒たちがF組の活動を見る中で、「どの子にもその子なりの事情がある」という前向きな人間理解を育むに至っている点です。この活動の継続とさらなる深まりを大いに期待しております。
プロフィール
岡崎市小中学校現職研修委員会 長期欠席対策部会
【代表者】
安藤 眞樹
【役 職】
部長
【活動開始時期】
2020年
【団体所在地】
愛知県岡崎市
【学校(団体)規模・活動参加人数】
○子どもの人数:全体 約340名(小学生相当23名、中学生相当315名)
*本年度5月初旬(令和5年度のF組在籍者数は市内全中学校合わせて約350名)
○指導者:内部約50名
○協力者(ボランティア等):約10名