活動内容
知識・技術・経験の宝庫である退職教職員と家庭や地域、学校が連携し、豊かな心を育む
団塊世代の大量退職による「現場力の低下」という課題に対し、今できることとして知識・技能・経験の宝庫である退職教職員の活用が試行され、1998年4月、高知市教育委員会の支援のもと、学校現場をサポートする社会教育関係団体として、「高知市教育シニア・ネットワーク」が立ち上がった。
これまで、環境整備的な支援、学習的な支援、生徒指導的な支援、講演・講師的な支援、学校経営に関わる支援や学校行事への参加など、活動は非常に多岐にわたる。会員の思いは、「学校に土足で入らない(学校現場の状況を最優先する)・煙たい存在にならない(現役教員の思いに配慮する)・要望があれば喜んで行く(できることは断らない)・シニアらしさ=温かさ・優しさを子どもに提供する」である。前に出すぎることなく、かつ必要な部分にそっと手を添えてくれる経験豊富な退職教職員の存在は、子ども、現役教職員に安心感を与え、シニア・ネットワーク会員にとっても、これまで培ってきたスキルを最大限に活かし、退職後の自身の人生を豊かなものにしている。
また、生活困窮世帯などへの高校進学および中途退学防止への支援は、その後の就労のためにも大きな問題であるとの考えから、健康福祉部と教育委員会が協働して2011年に「高知チャレンジ塾」の事業がスタートした。高知市教育シニア・ネットワーク内に立ち上がった「高知チャレンジ塾実行委員会」が事業委託を受け、週2回中学生への学習支援を行っている。学習支援員の中にも、シニア・ネットワーク会員が複数入っており、さまざまな課題をもつ生徒への支援などを行うなど、中心的役割を担っている。「高知チャレンジ塾」は独特な温かい雰囲気の空間となっており、生徒にとって「学びの場」と「居場所」の二面性を持っている。
在職中の豊富な経験をもとに、退職教職員が長年蓄積された力を大いに発揮し、保護者とともに地域ぐるみで子どもたちの健やかな成長を支援している取り組みである。
【写真】
指導者(シニア・ネットワーク会員)とともに水鉄砲づくり
審査委員より
地域の退職教職員による大規模なボランティアのネットワークによって包括的な教育支援システムが構築されている。学校勤務経験者ならではの専門性を生かした活動が17年にわたり継続的、発展的に展開している。このユニークで意義深い組織的実践は高齢化社会における先導的なモデルとして高く評価できる。
プロフィール
高知県 高知市教育シニア・ネットワーク(こうちしきょういく)
【創 立】
1998年
【学校(団体)規模・活動参加人数】
○会員 : 退職教員300名、本部役員・事務局員17名、各校区役員40名