博報賞

活動タイトル

世界で一つの「炎」を守り、つなげる「たたら体験学習」

奥出雲町文化体験実行委員会

日本文化・ふるさと共創教育部門|-| キーワード:地域の魅力・情報を外部へ発信/ツール作成/ガイド「総合的な学習の時間」で探究する取組島根県
奥出雲町文化体験実行委員会

活動内容

たたら製鉄の体験を通して、子どもたちの主体性や表現力、他者との協働力を育む取組

 奥出雲は「たたら製鉄」の技術が1300年の時を経た今も継承されている町で、町内すべての小学校の子どもたちを対象にした「たたら体験学習」を2003年から実施してきた。その傍ら、子どもたちについて、主体性に欠ける点や人前ではっきりと自分の考えを述べる等の表現力が貧しい点が従前より課題となっていた。そこで2013年度より「つなぐ・伝える・表現する」をテーマに、以下の3点を大切にしながら、子どもたちの課題の解決をめざして学習を進めている。
●ゴールを体験から表現にする(単なる体験で終わらず、振り返り活動により体験が再構築され、相手意識が明確となり、表現力の向上に役立つ)。
●体験学習にテーマをもつ(指導側と児童側に一体感が生まれ、テーマをもとにしたコミュニケーションにより、問題解決力や思考力・表現力の向上につながる)。
●メモをとる力を育成する(何かを表現するためにメモをとり、そのメモをもとに振り返りや表現活動をしていくことで、聞く力・要約力・集中力の向上に役立つ)。
 この体験学習では、小学6年生を中心とした児童を対象に、各学校での事前学習のあと、小学校合同で3日間の体験を実施する。1日目は講義や資料などで学習し、2日目は炉を築くなどの事前準備。3日目は実際に鉄づくりを行い、夕方に真っ赤に焼けた鉄の塊「鉧(けら)」を取り出し、体験は終了となる。
 その後、子どもたちは体験を振り返り、まとめ、その内容を全校児童に伝える報告会を開催してプレゼンテーションを行う学校や、「たたら新聞」を作成して新聞コンクールに応募する学校など、各学校の教育課程に基づき、子どもに「まかせる場」を意識しながら事後学習を行っていく。
 「たたら体験学習」の目的を「体験すること」から「体験を通じて感じたこと・得たことを表現すること」へと再定義したことで、「つなぐ・伝える・表現する」というテーマが、町全体でたたら製鉄を支えていく素地をつくるうえで大きな役割を果たしている。

【写真】
まとめた内容を発表するプレゼンテーション

審査委員より

町の財産である「たたら製鉄」を全学校が体験学習に取り入れ、町ぐるみで盛り上げていこうとする取組であり、地域と一体になって取り組む学校教育のモデル的な実践であるといえる。教育委員会と各学校が協力体制を確立し、「たたら体験学習」を町の教育事業の中核に位置づけ、各学校の学校経営やカリキュラム・マネジメントなどと密接に関わらせている。「たたら製鉄」体験そのものに価値があるが、表現することを重視し、今日求められる、思考力・判断力・表現力・道徳性など、汎用的な力が育っている。「チーム学校」という視点からも高く評価できる。

プロフィール

島根県 奥出雲町文化体験実行委員会(おくいずもちょうぶんかたいけんじっこういいんかい)

【代表者】
川田 勝巳(かわた かつみ)

【役 職】
委員長

【勤務校所在地】
〒699-1832島根県仁多郡奥出雲町横田1037番地
TEL:(0854)-52-2680 FAX:(0854)-52-3048
E-mail:shakaikyouiku@town.okuizumo.shimane.jp(奥出雲町教育委員会)

【学校(団体)規模・活動参加人数】
○児童・生徒数:105名(H28年度) ○指導者数:19名(H28年度)