
「今日は『言葉って楽しい』という気持ちを、心のおみやげとして持ち帰ってくれたらうれしいです」と久米さんは話し始めました。


久米さんが「言葉のかけ算」について、教えている様子
久米さんは「『言葉』は、あらゆる楽しいことの材料になる」と考えているそうです。たとえば、おもてなし上手のカフェの店員はすてきな言葉を使ってかがやいています。お笑い芸人は言葉選びがおもしろい。学校の先生は心の通った言葉でさまざまなことを教えてくれる言葉の魔術師です。「みんなには、いっぱい本を読んで、たくさんの言葉を知ってほしいです」と久米さん。



久米さんの話にうなずいたり、笑ったり、手をあげて発言したりして、楽しい作文教室となりました
ところで、好きな人、家族、友だちなどに「みとめてもらいたい」ということはありませんか。そんなとき、相手をふりむかせる言葉を使えたら良いですね。
そこで久米さんが教えてくれたのが「言葉のかけ算」です。一つひとつは知っている言葉でも、かけあわせると急に「新しさ」が感じられ、人の気持ちをひきつけることができます。
たとえば久米さんの作品に「言葉」と「〇〇屋」をかけあわせた『言葉屋』、「忘れもの」と「遊園地」をかけあわせた『忘れもの遊園地』があります。こんなふうに、みなさんも言葉をかけあわせて新しい言葉を作り、それを題名にして、お話を作ってみてください。


参加者たちと談笑しながら、言葉の楽しさを分かち合う
次に久米さんは、言葉のかけ算で「相手思い」の練習をしようとよびかけました。かけあわせるのは「自分が伝えたいこと」と「相手の興味がありそうなこと」。このかけあわせにぴったりなのが「読書推せん文」だといいます。
まず、すすめたい相手を決めます。家族や友だちでも良いですし、「〇〇な人」のように自分で作っても良いです。

相手が決まったら、話しかけるように書き出してみましょう。「〇〇でなやんでいたね、こういう本があるよ」と相手に教えるように書き出したり、「〇〇って知ってる?」と質問したり、「相手のことをたくさん考えることがとても大事です」と久米さんは話します。




児童・生徒が作文を書いている所を見て回る久米さん
「書くことにまよったら、『読書推せん文』の設計図(下図)にある四つの内容についてメモをして、1から4の順に書けば、作文ができあがります」と久米さん。
最後に「たくさんの本に出あって、紹介しあってくれたらうれしいです。みなさんが、だれかに思いを伝えることができて、明日がちょっと楽しくなるといいな」とメッセージを伝えました。


久米さんのお話の後は、自分で選んだ一冊を使って、読書推せん文を書くことに挑戦。児童・生徒のみなさんは、久米さんとおしゃべりをしたり、アドバイスをもらったりしながら作文を書きました。各校の様子をリポートします。
神奈川県・平塚市立大原小学校
東京都・江戸川区立瑞江小学校
東京都・板橋区立中台小学校
東京都・八丈町立三原中学校
千葉県・千葉市立加曽利中学校
神奈川県・カリタス女子中学校
読書好きな人が多いという大原小学校。季節を感じる、すてきなかざりがほどこされた図書室に5、6年生が集まりました。
「いつもの作文の時間と全然ちがって、みんな楽しそう」と、担当の先生は目を細めます。「ふだんは作文が苦手な子も、今日は原稿用紙をほぼうめていて、うれしいです」とも。
児童からは「『言葉は楽しい』と思いながら作文が書けました」「相手に合わせることを意識して作文を書いてみました」という感想がありました。
作文の発表では、ぐうぜん同じ本をおすすめした人たちがいて「ちがう切り口で、どちらもすてきな紹介でした」と久米さんをおどろかせました。

106年の歴史がある瑞江小学校。開校記念日の前日に、明るく元気な6年生がむかえてくれました。
作文をどんどん書き進める人、じっくりメモをまとめる人、ひたすら考え続ける人など、それぞれのスタイルで取り組みました。「最初は書けるかなと思ったけど、書き始めたら、すらすらとできました」「久米さんに『おすすめの理由を書くといいよ』と言ってもらいました」「設計図の1〜4にそって書いたら、できました」と手ごたえを口にする人がいました。
担当の先生は「伝えたい相手がいることで、作文が書きやすいようですね。今日が、作文を楽しいと思うきっかけになれば」と期待をこめました。

中台小学校では毎月、約200字の「ミニ作文」に取り組んでいるそうです。「いつも作文の書き出しになやんでいたけど、今日は相手に話しかけるようにしたら、すぐに書き始められた」という人がいました。また、「今までとはちがう、はじめての作文の書き方を教えてもらって、おもしろかった」という声もありました。
作文を発表した人には「なぜおすすめなのか、とてもていねいに書かれていて、心を打たれました」と久米さん。
「過去の入選作文をいくつも紹介してくれたり、まよったらこういう順番で書くといいよとアドバイスがあったりしたので、作文が書きやすかったようです」と担当の先生は話しました。

伊豆諸島の「八丈島」にある三原中学校。人数が少ない分、生徒同士や先生との距離が近いのが印象的でした。「部活の先生にすすめたい」という本を持参した人や、友達同士で「この本、〇〇ちゃんも好きだよね」と確認し合う人も。久米さんも交えて話に花が咲き、「わいわい書くと書きやすい」という発見もあったようです。

静かに集中して始まった作文の時間。書き終えたあとには「作文に苦手意識があったけど、楽しいかもと思えました」「久米先生の話を聞いてから書いたら、スラスラ書けました」という感想がありました。発表では、情感たっぷりに読む人や、統計データを示して説得力をもたせる人など、個性豊かな作文の数々に久米さんも「名作!」と感心しきりでした。


生徒のみなさんは毎朝10分間の朝読書を通じて、日ごろから本に親しんでいます。「何度も読んだ本だったので、すんなりと作文が書けました」と、作文に本への思いを込めました。また、「抜き出したセリフを中心に書いてみたら、うまくいきました」「相手のことを考えて書きました」と、久米さんのアドバイスをさっそく生かして、作文に取り組むことができました。
