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対談「オープンダイアローグ」に学ぶ 子どもとの対話の持つ可能性」 (3/3)

斎藤環教授(精神科医/筑波大学)× 高橋暁子(元小学校教員/ITジャーナリスト)

親子間のオープンダイアローグを成功させるコツ

高橋 実際に活用してみたいので、聞く時のコツを教えてください。

斎藤環教授(精神科医/筑波大学)
斎藤 まずは共感することが大切です。たとえば、「私も同じ経験があるので、その辛さはよくわかります」とか、「話を聞いていて私も苦しくなってきました」のように、感情を伴った聞き方ができるといいですね。

基本的には、相手の話を批判したり否定したりしないことです。言葉で否定しなくても、態度に出すのもいけません。否定や批判は、思った以上に態度に出ているものです。対話の目的は「なにが正しいか」を追求することではありません。いわば主観と主観の交換ですから、批判をする必要はありません。

基本的姿勢は「あなたのことをもっと知りたい」という興味関心を前面に出すことです。上からでも下からでもなく、相手に対する好奇心と尊重の気持ちを忘れずに向き合うことです。経験をもっと深めるような質問をするのがいいでしょう。その時の気持ちを語らせたり、経験を描写してもらうのもおすすめです。

感想を伝えるのもいいですね。相手の好きなものを「私も好き」と言えるなら結構ですが、もし嫌いだったら「私にはよくわからない」と伝えても構いません。なんでも迎合する必要はありませんが、相手がなぜそれを好きなのか、この点について丁寧に尋ねてみるのは大切なことです。

高橋 子どもの話を聞いていると、つい「つまりこういうことね」とまとめてしまうんですが...

斎藤 まとめたり解釈したりするのは好ましくないとされています。相手を不安にしてしまうことがあるからです。わかりにくいことは一つ一つ質問を繰り返すことです。「わかったつもりになる」ことを、いかに我慢できるかが大切です。

高橋 耳が痛いです...。他に注意点はありますか?

斎藤 親御さんの多くはお子さんの言葉を、みなまで言わせないでさえぎってしまう傾向にあるので、とにかく最後まで話させることが大切です。一時間じっくり話を聞ければ、ほとんどの方が満足します。ただ聞きっぱなしではなく、子供の発言にはさまざまな反応を返してください。お子さんが「お母さんの態度に腹がたった」と言ったら、「お母さんの態度に腹が立ったのね」と繰り返したうえで「よかったら、どういうところに腹が立ったのか、もう少し話してくれる?」と聞いてみましょう。言葉を丁寧に聞き取り、それに誠実に反応しましょう。家族はお子さんにとって環境そのものです。ただしっかり話を聞くようにするだけでも、お子さんの「居場所」が広がり、呼吸がしやすくなるのです。

わからないものを無理にわからなくてもいいんですよ。たとえば統合失調症の患者さんが「幻聴が聞こえた」とい訴えてきても、無理に「わかる」と同意する必要はありません。「私には聞こえないのでわかりませんが、わからないのでもっと詳しく教えてください」でいいんです。我々も、他人に知りたがられると嬉しいですよね。知りたいと思われていること自体が喜びなんです。

それから「オープンダイアローグ」という名称からよく誤解されることですが、喋りたくないことは喋らなくていいんです。自分の隠したいことを喋る必要はありません。つい出てしまうことはありますが、秘密を暴く手法ではないのです。

高橋暁子(元小学校教員/ITジャーナリスト)
高橋 自分から話してくれる子ならいいのですが、子どもに話を振ってもなかなか話してくれないことがあります。面倒臭がって「忘れた」と言われてしまったり。

斎藤 無理に言葉を引き出そうとする必要はありません。ただでさえ子どもにとって親の「知りたい」は、監視や管理と誤解されやすいのです。その意味では「何を考えているか」よりも「何を感じているか」のほうに焦点を当てるといいでしょう。リフレクティングも効果的です。お子さんはなかなか話してくれなくてもご両親間で、ご本人のいるところで、お子さんについて話し合うのです。「この子はこんなふうに考えているのかしら」「この子の将来を心配することしかできない自分がもどかしい」みたいに。これはお子さんから「そうじゃないよ」と突っ込まれるのを期待してのことでもあります。あと、もちろんお子さんから相談などをもちかけられたら、しっかり反応を返して話をふくらませてください。対話の目的は解決ではなく、対話が続くようにすることですから。

対話はシンフォニーでなくていいんです。調和ではなく、お互いの違いを掘り下げることが大切です。オープンダイアローグでは、シンフォニーではなくてポリフォニーと言っています。様々な音が混じって一つの音楽になるというというよりも、様々な音がそれぞれ混じらずに並列していても成立するような音楽という比喩ですね。

高橋 最近は、親子間でもLINEなどのチャットでコミュニケーションすることも多くなっています。オープンダイアローグは、そのようなものでも可能でしょうか?

斎藤 残念ながら、チャットでは難しいですね。感情的なものが伝えにくいからです。やはり直接話すことが大切ですね。

高橋 私はそちらが専門ですが、やはりチャットなどではコミュニケーションが難しいと感じています。直接話し合うことが大切なんですね。ぜひ実践として、子どもとの対話を心がけてみたいと思います。

本日は興味深いお話をありがとうございました。

(2019年1月29日 筑波大学研究室にて)

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