コラム

Vol.127

by ひきたよしあき 2026.01.15

【1ミリのコトダマ】

新しい年を迎えると、気合を入れて大きな目標を立てがちです。

子どもの頃の私がそうでした。
「新年の目標」をしっかり立て、それを書き出した紙をもって神社で「達成できますように」とお願いをする。
何事も計画するのが大好きで、計画表を作って机の前に貼りだしていました。

しかし、こうした気合や根性が長く続くわけがありません。
計画は好きでも、実行するのが苦手な自分がいます。すぐに、計画と行動にズレが生じる。3日めくらいから微妙にズレはじめ、10日もすると、できない自分に嫌悪するようになる。目の前の計画表を外してはため息をついていました。

通っていた進学塾で、耳の痛い言葉を聞いたのもこの頃です。

「計画を立てるのが好きな子で、成績のいい子はいない」

先生の言う通りでした。色ペンをつかって計画表を作るのが楽しいだけで、それに従って勉強するのは二の次。勉強したくないから、計画表作りに逃げているだけでした。

先生は、こうも言いました。

「計画表をつくるのが悪いといってるんじゃないんだよ。できもしない、壮大な計画を立てるのがよくないと言ってるんだ。
どんなに計画表が立派でも、寝不足だったり、遊びたい気持ちが抑えられなかったりしたら実行できないに決まっている。だから、計画は、こんなふうに立てるんだ」

先生が言った計画の立て方はこうでした。

1 やるべきこと、やらなくてはいけないことをできるだけ紙に書きだす。

2 そのリストを優先順位の高い順に並べる。

3 優先順位の高いものから実行していく。

4 その日に終わらなかった分は、翌日のリストに加えて、明日実行に移す。

それは「スケジュール」ではなく「To Do リスト」と言われるものでした。

生徒たちは皆、メモ用紙にやるべきことを書き出しました。優先順位をつけたのち、その順番に沿って新しいメモに清書しました。
項目がひとつ終わるごとに、鉛筆で線を入れて消していく。終わったところにスーッと線を入れる快感は格別なもの。「達成感」とはこういうことか!と思ったものです。

壮大な計画表ではなく、日々の小さなメモですから、その日の気分によって入れ替えも可能です。優先順位の高いものに取り組みたくない日は、低い項目から終わらせていく。それが終わったとき、線を入れて消しても達成感は十分味わうことができました。

「壮大な計画通りに動くことよりも、今日はやるべきことができた。全部ではないけれど、2つ終えることができたと前に進むことが大切。

今日は、昨日より1ミリ進歩した!

と思うくらいで十分。それが計画ってものです」

本当の計画には、「1ミリのコトダマ」が宿る。
終われば、「できた!」と声を上げたくなる。

私は、50年近く経った今でも、毎朝このやり方で仕事をしています。

毎日毎日、積み残しもある。
でも、明日もあることですから、完璧をめざさなくてもいい。

「まぁ、いいか。明日もあるし。できなければ また途中で考え直せばいい」

なんて、つぶやきながら1ミリの進歩をめざして邁進しています。

よかったらあなたもやってみませんか。
紙と鉛筆だけでつくることができますよ。

2026年、1ミリ1ミリ、進歩する一年にしましょうね。

  • ひきたよしあき プロフィール

    作家・スピーチライター
    大阪芸術大学客員教授
    企業、行政、各種団体から全国の小中学校で「言葉」に関する研修、講義を行う。
    「5日間で言葉が『思いつかない』『まとまらない』『伝わらない』がなくなる本」(大和出版)、「人を追いつめる話し方、心をラクにする話し方」(日経BP)など著書多数。