活動内容
本校は、トキの主たる生息地であった旧新穂村にある。昭和40年代には、ケガをして保護されたトキを飼育したこともあり、「トキの学校」と呼ばれるなど、歴史的にトキと深いかかわりをもっている。野生トキの生息数の減少が進み10羽以下となった昭和50年代初めから、トキが地元のシンボルであることを知り、トキのために何ができるのかを考えながらトキの学習に取り組んできた。
当初、子どもたちは「トキが自然界に放鳥されればいい」とだけ考えていた。しかし、トキが生き続けるためには、まず、トキの餌となる生き物の種類と数が増えなくてはならない。そのためには、そのような生き物が育つ環境が必要であることに気付いた。そしてトキと人間の共生について考えるようになった。
多くのボランティアティーチャーの協力による「トキ集会、探鳥会、ビオトープ造り、トキ解説員、水辺の生き物調べ、トキに優しい田んぼづくり、他地域や学校との交流、トキの学習会、学習成果の発表」などのトキの学習を通して、自然や人とかかわりながら、生き物と環境のつながりを考える力や学習活動の企画力、問題の追究力、学びの表現力を高めている。また、豊かな感性も育っている。自然や伝統を大切にし、郷土を愛し誇りに思うとともに、地域のために自分たちも頑張ろうと考え、活動する子どもたちの姿が見られる。
本校における長期間にわたる継続的な取り組みは、次代を担う子どもたちへの教育効果と同時に保護者や地域社会への教育活動の発信となっている。また、地域住民の子どもたちへの温かい支援は、トキと共生する社会づくりを進める上で有効な取り組みとなっている。また、教職員と保護者、地域が一体となって活動することから円滑で活力のある学校運営ができている。このような、子どもを取り巻く教育環境は、自らの力で生活を豊かにすることが大切であるということを子どもたちに気付かせると同時に、手本となる大人社会があることを誇りに思う子どもたちの育成につながっている。
【写真】
トキの餌になる生き物が学区内のどこにどれくらいいるかを調査
審査委員より
「トキ」をテーマにした多様な活動が、空間と時間を軸にする座標上に構成されたスケールの大きな取り組みである。空間的には、トキの生息環境整備を目指した餌場や水田づくり、水辺の生き物調べ等々。時間的には、昭和50年代からトキの学習に取り組み、今日の環境保全活動に至っている。「トキ解説員」など、子どもの主体的な社会参加活動も実践され効果を挙げている。
プロフィール
【創立】
1902年
【団体の規模】
・名児童・生徒数:85名
・クラス数:7
・指導者数:13名