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教育課題に関する研究会議 「教育イノベーションイニシアティブ シリーズシンポジウム(第一回)」開催報告」

2018.11.06

9月2日(日)、教育課題に関する研究会議「教育イノベーションイニシアティブ」のシリーズシンポジウム第一回が赤坂インターシティ コンファレンスセンターで開催されました。
この会議は、「複雑に絡み合う教育課題を解決するには、①教育界及び各界の知恵の交流、②具体的な共創機会の創出、③教育の"そもそも"を考える機会、が極めて重要である」との有識者のご意見をもとに開催されるものです。
第一回は、『グローバルな視点からこれからの人財要件を考える』をテーマに、文科省・経産省など教育行政を担う省庁関係者、教育長、学校長、研究者、現場教員、教育NPOをはじめとする教育界の方々、さらにはビジネス界の方々も含め、全国から51名が参加しました。

基調講演では、株式会社オープンシティ研究所代表取締役所長日下部元雄氏より、「国際社会で生き残れる人材をどう育てる?~7,000人の社会データに基づいた問題意識~」というタイトルで講演がありました。日下部所長は、国際金融機関(世界銀行・欧州復興開発銀行)でのご経験を交えながら、「仕事に対する意識の持ち方が外国人と日本人とでどう違うか」というテーマについて説明されました。
また、国際機関で貧困問題に対峙してこられたご経験をもとに開発された、コミュニティー・カルテ[CCS]調査(若者の貧困リスクが生じる過程に関する定量調査)での、「欧米の子どもたちに比べ、日本の子どもたちは『自己肯定感』・『主体性』が著しく低い」、という調査結果をもとに、「それらの力を育むためには、①生涯教育の視点、②内発的動機づけの視点が重要である」との提言をされました。

続く基調講演として、早稲田大学ビジネススクール教授の平野正雄氏より、「リーダーを育成するーグローバルな人材要件の変化と対応ー」というタイトルで発表がありました。平野教授からは、「なぜ今リーダー育成・リーダーシップ教育が大事なのか」というテーマのもと、「より良い社会づくりのためにはリーダーの存在が不可欠であること」、「リーダーシップ教育は決してエリート育成ではないということ」、「リーダーシップとは、個人に内在し個々人がより良き人生を送るために重要な資質でもあること」など、示唆に富んだお話がされました。
また、リーダーシップを身につけるためには、「①"アプリ"としてのナレッジ(経済学、戦略論、会計、財務)、②"OS"としてのスキル(問題解決力、分析力、論理思考、コミュニケーション)、③"ハードウェア"としてのマインド(アスピレーション、自己肯定感、行動力、レジリエンス)を育成することが肝要である」という貴重な提言もありました。特に、平野教授は、「21世紀のビジネスリーダーの育成においては、世界観、生き様・ストーリー、倫理・社会性、共感力・思いやりといったマインド的要素が特に重要視される」という点を強調されました。

その後、オープンディスカッションでは、企業で人材開発に携わっているビジネス界の方々も含めた活発な議論がなされました。ビジネス界からは、「心身ともにタフな人材を育成すること」、「スキル・知識・経験等のほかに『覚悟』もまた大切ではないか」、という指摘がありました。また会場からは、「教育成果を最大限に引き出すために教員のリーダーシップを育成することの重要性を再認識した」という意見や、「『人生100年時代』を生き抜く子どもたちがこれから生きていくために学校は何ができるのか深く考えさせられた」という感想もありました。特に、「『リーダーシップ教育は、エリート教育ではない』という平野教授のご発言に感銘を受けた」という声が非常に多く、「教育現場の実践を後押ししてくれる非常に有り難いキーワード」、というコメントをされる教員の方もいました。

教育イノベーションイニシアティブ シリーズシンポジウム」では、教育界及び各界、すなわち、省庁・研究者・教育委員会・現場の実践者である学校長や教員・教育NPO、さらにはビジネス界と多岐にわたる方々が、多様な意見を持ち寄り、「教育のそもそも」を考える場です。博報財団は「場をご提供する」ことを支援しています。