入賞者・入賞団体

2023年度の入賞団体に、応募のきっかけ、読書推せん文に取り組んだときの児童・生徒の様子、コンクール参加後の読書活動の変化などについてお聞きしました。
※お話を伺った先生の肩書きは2024年度のものです。
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2020年度入賞団体の声はこちら

京都市立洛北中学校

(京都府)

250~300字という文字数は全員で取り組みやすく、図書館活用と読書教育の推進にちょうどいいコンクールでした。

徳島聴覚支援学校

(徳島県)

子どもたちが、本を通じて人との関わりを広げていくことを学ぶよい機会となっています。

関西大倉中学校

(大阪府)

推せん文を書くことで、読む力・書く力が高まり、人からすすめられるものへのアンテナも立てられるようです。

函南町立桑村小学校

(静岡県)

体験活動と読書を結びつけて、言葉で表現できるようにしていこうという学校の目標に沿って取り組みました。


Coming soon

(6月下旬公開予定)



京都市立洛北中学校

(京都府)

読書教育と図書館活用の推進のために
 本校は全校生徒900名の中学校です。昨年度は、1年生約270名と、2年生約250名のうち、ほぼ全員がコンクールに応募しました。本校の司書教諭にすすめられて、2022年度と2023年度に参加しています。
 読書教育の推進と、図書館の活用推進を考えていましたので、ちょうどいいコンクールだと思いました。コンクールに応募するためには、子どもたちは本を読まなければなりませんし、そのために図書館で本を借りるようすすめることができます。募集作品の文字数が250〜300字というのも、子どもたちが取り組みやすい条件だと思いました。
5名の入賞がモチベーションアップに
 本校では、国語の授業を図書館で行ったり、司書教諭による絵本の読みきかせを行ったりと、年間を通して図書館に親しむ活動を続けていました。そのため子どもたちは、すんなりと楽しんでコンクールに取り組んでいるようでした。時期的には、夏休みの宿題のひとつとして取り組みました。
 1年目の応募では、本校から5名の作品が入賞しました。入賞した5名の子どもたちの中には、普段、学習に苦手意識をもつ生徒も含まれており、2年目にはそのことも全員が積極的に取り組む原動力になったように感じます。入賞すると図書カードがいただけることも、モチベーションのひとつだと思います。
 入賞した5名の作品と推せんした本は、学校の図書室で展示および貸し出しをしました。生徒の反応もよく、展示された本の貸し出しも活発だったようです。また、本校は地域の図書館とも連携しており、こうした本に触れる機会を生かしていきたいと考えています。子どもたちがお気に入りの本のPOPを作ったときには、実際の本のところに展示していただいたこともあります。
教師にとってもハードルの低いコンクール
 コンクールへの応募は、文章を集中して書く機会になりますので、子どもたちの作文力向上にも、少しずつ役立っているように感じています。ほかにもたくさんのコンクールがありますが、このコンクールの文字数が少ないという特徴は、生徒だけでなく、教師側のハードルも下げてくれていると思います。コンクールに応募するからには、教師は子どもたちの書いたものをチェックする必要がありますが、長い作文をチェックするとなると、特に大人数の学校ではかなりの負担になるからです。
 個人賞にしろ団体賞にしろ、コンクールで入賞するというのは、子どもたちの自信につながります。受賞をきっかけに、文章を書くことに目覚める子どもも出てくるかもしれません。気になるコンクールがあったら、ぜひ積極的に取り組まれることをおすすめします。


(国語科 島田成章先生)

徳島聴覚支援学校

(徳島県)

外への発信を経験する機会として
 本校では、聴覚障害のある4歳から18歳までの幼児、児童、生徒、32名が学んでいます。昨年、小学部、中学部に在籍していたのは17名で、コンクールには合計15作品を応募しました。本校の敷地内には、徳島視覚支援学校が併設されており、両校の子どもたちが交流するときに、本の紹介をすることもありますが、校外のより多くの人に子どもたちの書いたものが伝わる機会になると思い、このコンクールへの取り組みを決めました。

本に親しむ活動の積み重ねの成果
 子どもたちの気持ちの部分を育てていくために、本はとても重要な役割を果たします。そのため本校では、幼稚部の段階から、絵本などを使って言葉を学ぶ教育を積み重ねています。幼稚部では、帰りの会で絵本の読みきかせをしたり、移動式の絵本ラックに季節や行事に関する絵本などを置いて子どもたちが手に取りやすいようにしたり、毎週金曜日には絵本の持ち帰りを実施したりしています。小学部に入ると、毎週木曜日に実施している「読書タイム」という授業での教員による読みきかせや、県立図書館の団体貸し出しを利用した読書月間など、本のある環境を提供するように努めています。また、中学部では、図書委員会の活動として、本を紹介するためのPOPやポスターの制作を日常的に行っています。こうした積み重ねによって、子どもたちにとって本を読むことや、図書室に行って本を借りることが習慣化していたので、コンクールへの取り組みもスムーズに行えたようです。

人との関わりを広げていくために
 コンクールへの取り組みは、教員にとっても役立つものでした。学校の図書室では、なるべく幅広い分野の本を購入するように心がけていますが、子どもたちの推せん文を読むことで、子どもたちがどんな本に興味を持っているかが手に取るようにわかり、本を購入する際の参考になりました。このコンクールは、本を通じて人との関わりを広げていくことを学ぶ良い機会となると思いますので、ぜひ学校をあげて取り組むことをおすすめしたいと思います。

(校長 廣島慎一先生)

関西大倉中学校

(大阪府)

「読書家の時間」と「作家の時間」
 本校は中高一貫校で、中学は約450名、高校は約1,500名、合わせて1,900名ほどの生徒が学んでいます。昨年度の読書推せん文コンクールには、中学1・2年生全員の約330名が応募しました。
 本校では、中学1・2年生を対象に、自立した読み手/書き手を育てることを目指した国語の授業を実施しています。週5コマある国語の授業のうち、2コマを読みたい本を読むことで読む力を高める「読書家の時間」、3コマを書きたいことを書くことで書く力を高める「作家の時間」と呼ばれる授業スタイルで行っています。生徒たちが書いたものは、教員が添削して終わりではなく、多くの人に読んでもらえるようにしたいと考えていましたので、このコンクールへの応募はよい機会となりました。250〜300字という字数は、学年全員で取り組むにはちょうどよい長さでした。

「入賞作品集」から読みたい本を探す
 昨年度は、まずはとにかくやってみようという感じでしたが、今年度、生徒たちには「読書家の時間」の中で、昨年度の「入賞作品集」や、ネットの「お気に入りの一冊ライブラリー」にできるだけ多く目を通して、自分が心惹かれた推せん文をひとつ選ぶように言っています。そのあと生徒同士で気に入った推せん文を読み合い、魅力的な推せん文は何をどう書いているのかを見つけようという授業をしています。その授業を踏まえて、「それでは自分で書いてみよう」というように展開しています。
 また、「読書家の時間」のひとつの狙いとして、自分で自分の読む本を選べるようになるということがあります。読みたい本がなかなか決まらない生徒が、昨年度の「入賞作品集」や「お気に入りの一冊ライブラリー」を見ながら選んでいる姿は、とても印象的でした。

「あの人にすすめたい」が「読み」を深める
 このコンクールの特徴は、「あの人に好きな本を伝えたい」という思いを文章に書くということです。そのことが、取り組んだ生徒たちの「読み」をとても深めていると感じています。すすめたい相手が見つからないという生徒に対しては、「自分がその本を読んでどのように考えたか、認識が変わったり深まったりしたか。そのことを考えてごらん」と伝えています。たとえば、「挑戦するのが怖かったけど、挑戦してみるといいかもしれないと思った」と答えた生徒がいたら、「それなら、挑戦するのが怖いと思っている子にすすめたら?」と伝えます。そういうやりとりの中で、生徒の「読み」は一段階深まっているなと感じています。

人からの推せんにアンテナを立てる
 自分が推せん文を書くという経験をすると、人がすすめてくれる本のことが気になりだすという効果もあります。推せん文を書く過程で、自分が読んだ本の中から1冊を選び出すという経験をし、それをどんな言葉で紹介しようかと考える経験をしたからこそ、人からすすめられるものに対してもアンテナを立てられるようになるのだと思います。
 このコンクール参加することは、生徒たちの「読む・書く」力を高めるために、役立っていると思います。

(国語科 堀内誠太郎先生)

函南町立桑村小学校

(静岡県)

課題解決にピッタリだったコンクール
 本校は、各学年1クラス、全校児童71名の小さな学校です。昨年度は、読書推せん文コンクールに、全児童が応募しました。
 本校は自然に囲まれた学校で、近所の農家さんで茶摘みの体験をさせてもらったり、近くにある水源涵養林に毎年遠足に出かけたりと、体験的学習に力を入れてきました。それが体験だけに終わってしまうことが課題でしたが、前任の校長が、体験活動と読書を結びつけて、言葉で表現できるようにしていこうという目標を掲げました。
 ちょうどその時に、このコンクールの存在を知りました。このコンクールは、課題の文字数が少なくて、作文が苦手な子にも取り組みやすく、自分の思いを伝える相手がはっきりしているので、全校で取り組むことになりました。

保護者に協力を呼びかける
 本校では、読書活動を大事にしていくために、学校から「読書通信」を頻繁に発信しています。その中で、保護者にコンクールへの協力を呼びかけました。「子どもたちが学校で作文を書いてくるので、応募については保護者に記入をお願いします」と呼びかけたのです。すると、保護者も読書について前向きに捉えてくれるようになり、そのことが児童全員で応募できたことにつながったと思います。
 子どもたちは、どの本をすすめるかはすぐに決められたようでしたが、すすめる相手を決めることには苦労していたようです。「先生、自分にすすめてもいい?」と聞いてくる子もいたので、「未来の自分だったり、過去の自分だったらどうかな?」と答えたりしました。

「エンジョイ読書」から「読書を味わう」へ
 団体賞を受賞したことについて、前任の校長は子どもたちに、「静岡県で団体賞を受賞したのは桑村小が初めてだ。みんなはそれだけすごいことをやったんだよ」と言っていました。小さな学校で、人間関係に変化も少なく、外に向かって発信する機会もなかなかないという環境の中で、この受賞は子どもたちの自信につながりました。子どもたちは、自分たちのいいところは読書だと自覚して、ますます本を読むようになりました。過去1年間の図書室の貸し出し点数も、前年に比べて増加しています。
 去年の合言葉は「エンジョイ読書」でしたが、子どもたちはもう充分に楽しめているので、今年の合言葉は「読書を味わう」としています。「味わう」とは、本の中の世界を楽しむだけでなく、本と現実の世界とをリンクさせて、実生活につなげていくことを表しています。読書を味わうことが、子どもたちの感性を育むことにつながっていくと考えています。

(教頭 山地正訓先生)