益江宏典(ますえ・ひろのり)
1998年小学館入社。『コロコロコミック』で『でんぢゃらすじーさん』、『デュエル・マスターズ』を担当。『てれびくん』で編集長を務めた後、2024年2月『コロコロコミック』11代目編集長に就任。


子どものころ、本を読むときのこだわりは"環境作り"。チョコレートと紅茶を用意して、寝転がってひとりで読む時間がとにかく楽しくて。
マンガ体験は、親に禁止されている中、仲良くなった新聞配達員の人が、ジャンプをこっそり読ませてくれたのがはじまりです。禁止されていた反動で、マンガの世界にハマっていきましたが、もし許してくれていたら…今の職業には就いていなかったかも(笑)
「マンガ編集者を目指そう!」と思ったのは、高校生になってから。当時、ジャンプ、サンデー、マガジン、スピリッツなど、週刊マンガ雑誌を読みあさっていました。大学時代は映画館で1年100本くらい映画を見ていました。




みなさんは、どんなマンガだと「読みたい!」と思いますか?
マンガを作る私たちは「どうしたらみんなが読みたいマンガを作ることができるか」そんなことをつねに考えています。
マンガを作るときに大切にしていること、ひとつ目は、物語の「はじまり」と「おわり」についてです。まず、読者がマンガに夢中になれるように、物語のはじまりはわかりやすくしています。そして、最後まで楽しんで読んでもらうために、物語のおわりで「え?」とか「そうだったんだ!」といった「驚き」を出したり、この物語で1番みんなに伝えたかったことを伝えるようにしています。
そのために、マンガ家の先生と編集者はお互いのアイデアをぶつけ合い、話し合いをしていきます。
マンガ家の先生には、描きたい物語があります。それをもっと面白い作品に導いていくのが編集者の仕事です。たまに喧嘩もしながら、お互いを尊重して、マンガ家の先生のベストを引き出していきます。編集者の腕の見せどころですね(笑)
初めて編集者となる新入社員には、マンガ家の先生と編集者の関係を学ぶために、マンガ家役になってもらい、実際にマンガの下絵になる『ネーム』を描く体験もさせています。これをすることで、マンガ家側の気持ちも理解でき、どのように作品を作っていくかを学ぶことができます。

新入社員が描いたネーム。作家の気持ちを理解するために取り組んでいる。
マンガを作るときに大切にしていること、ふたつ目。
マンガ家の先生に、「こんなピンチがあります」「あんな解決法はどうですか?」や、登場人物たちの色々な想いのヒントになるアドバイスができるように、編集者もみんなと同じように日々勉強しています。例えば、ニュースやドキュメント番組を見たり、もちろんマンガもですが、様々な本をたくさん読んだりして、情報を集めています。
マンガを読むときは、物語がわかりやすくはじまっているか、驚きがあるか、こんなピンチはすごい、など、1コマずつ考えながら読み進めてもらうと、もっとマンガを楽しむことができると思います。
「コロコロコミック」は、今も昔も男子小学生のみなさんに愛されています。その理由のひとつが、「コロコロコミック」のマンガ家の先生は、子どもを想ってマンガを描いているからです。マンガ家先生と編集者は、子どもが読みたくなるマンガを作るためのチームです。このチームの想いが、きっと読者の子どもたちみんなにも伝っているのだと思います。
また、他にはない、ギャグをメインとしたマンガ雑誌というのも強みですね。
ここからは、将来マンガ家を目指す人もいると思うので、マンガの「今」と「未来」について、お話したいと思います。
昔の「コロコロコミック」は、お母さんが「そんなの見たらダメ!」と言うような笑いの強いマンガ雑誌でしたが、最近は、お母さんに怒られない、優しい笑いのマンガを、子どもたちも読みたがるようになりました。
一方で、今の子どもは、色々なことを知り、経験もしているので、難しさや深みのあるストーリーを楽しんでくれています。なので、マンガを作る側もクオリティを上げていく必要があります。
さらに、みんながSNSを利用し、AIが進化してきていることもあり、これからのマンガ家はオリジナリティが求められると思います。
もし、マンガ家を目指すなら、たくさん色々な経験をして、自分にしか描けない物語を描いてみてください。そのために、まずは描く練習をしてみると、マンガを読むことも今まで以上に楽しくなると思いますよ。



質問 :おもしろい推せん文を書くためのコツはありますか。
益江さんの答え:感情を入れて書くことですね。「◯◯で、◯◯だから」とただ文字を並べるのではなく、「びっくりした」「すごく笑った」など、自分の感情を組み込むことで、読みやすい文章になります。そこに「なぜびっくりしたか」まで入れることができたらさらに◎ 例えば「こんなやつがクラスメイトにいて、僕は超嬉しい!」と感情を入れ、その後「身長180cmで、みんなを笑わせてくれる優しいやつで…」と、説明をする。これで、イキイキとした文章になると思います。
質問:将来マンガ家になるためには、何をしておくとよいでしょうか。
益江さんの答え:喜怒哀楽の表情を描く練習です。マンガでとても重要なのが、表情なんです。マンガ家の先生でも、人物やキャラクターの表情を描くことが苦手な方もいます。イキイキとした表情を描けるようになるには、練習が必要。怒っている表情や悲しい表情をそれぞれ10パターンずつ、とにかくたくさん描けるようにしておく。色々な表情が描けるということは、マンガ家にとって"最大の武器"になります。



