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博報財団こども研究所シンポジウム2017~地域まるごと学校だ!~開催レポート

2017/10/06 カテゴリ:
イベント情報
シンポジウム

2017年8月21日(月) 東京会場:THE GRAND HALL
2017年8月23日(水) 京都会場:京都烏丸コンベンションホール

2016年に、博報財団こども研究所によって実施された、静岡市立清水江尻小学校における「地域を動かす、子どものパワー!」をテーマにした調査研究プロジェクトの報告会が、東京・京都の両会場で行われました。各会場には、100名を超える多くの教育関係者やビジネスマン、そして未来の教育を担う学生のみなさんにご参加いただきました。

プログラム

14:00 開会あいさつ 八木祥和(博報財団こども研究所所長)
14:15 キーノート「地域から関わる学びから見る、子どもの"実態"と"実体"」 嶋野道弘氏(元文教大学教授)
14:45 ドキュメンタリー映像上映
15:35 調査結果報告(博報財団こども研究所研究員)
山下由修氏(静岡市立大里中学校校長 元静岡市立清水江尻小学校校長)
16:20 参加者による対話
17:10 総括 嶋野道弘氏(元文教大学教授)
17:30 懇親会

開催レポート

冒頭、こども研究所所長の八木祥和のあいさつによって語られたのは、現在の日本の教育環境について。世の中では、"100年に一度の転換期"を迎えているとも言われ、その現状に直面する教育者のあり方や立場の難しさについて語られました。今回の調査は子どもを知ることによって、課題解決の一助となることを目的に実施、視点は「学校が地域との関わりを持つと、どのような変化が生まれるのか」。静岡市立清水江尻小学校を舞台とした調査報告を通して、多くの発見があったことが紹介されました。

博報財団こども研究所所長 八木祥和
博報財団こども研究所所長 八木祥和

つぎに登壇したのが、元文教大学教授の嶋野道弘氏。はじめに述べられたのは、子どもはものすごい可能性を持っているということ。考え方・知的好奇心・探求心・情緒性・感受性など、大人たちが感嘆に値する力を持っているという視点でした。つづいて「地域と関わる学びから見る、子どもの"実態"と"実体"」をテーマにしたプレゼンテーションが行われました。実態とは「その時々の子どもの状態のこと」であり、実体とは「子どもの本質」を指すのだといいます。『教育という観点から見ると、この2つのどちらかを見るだけでは十分ではありません。両面を見なければ子どもを本質的に捉えることはできないのです』。たとえば子どもは誰しも、能動性・主体性を持っている。しかし実際には、すべての子どもが能動的・主体的な行動・言動をするとは限りません。しかしだからといって、それらの力を持ち併せていないのではなく、発揮する場がないだけなのだそうです。今回の調査では、子どもたちの秘める力が、どのように変化し、引き出されていったのか。その過程をつぶさに観察することによって、変化の瞬間を発見することができました。さらには、子どもだけでなく、小学校の先生、地域の住民までもが変化を遂げたことが説明されました。

元文教大学教授 嶋野道弘氏
元文教大学教授 嶋野道弘氏

今回、同小学校には、こども研究所のスタッフと株式会社博報堂のチームが約4ヶ月に渡って密着しました。「コミュニティ・スクール」と認定された清水江尻小学校の高学年クラスには、"巴きら"と呼ばれる、「地元を流れる巴川と向き合うこと」を目的にした総合学習の授業が設けられています。この授業内容を研究所チームが企画することで、子どもたちがどのように変化していったのかを観察しました。4ヶ月間の様子をまとめたドキュメンタリー映像は、講演に参加された方が追体験できるように編集されています。50分という少々長めの上演時間ではありましたが、みなさんが最後まで真剣に画面を見つめる姿がありました。映像はホームページでもご覧いただけるので、興味のある方はぜひご覧ください。また映像上映後には、「映像を見ていちばん心が動いた瞬間」について司会者から問われ、参加者同士で話し合っていただきました。参加者同士は初対面にも関わらず、積極的に会話をしていただき、感じたことを交換し合いました。

ドキュメンタリー映像を見る参加者
ドキュメンタリー映像を見る参加者

つづいて現場で子どもたちとともに共同研究を行った客員研究員から、5つの考察を報告しました。そのうちの一つ、「自己肯定感の高まり」に関する考察は、参加者のみなさんからのご関心も高かったように思います。自己肯定感とは、「自分で自分のことを好きだと思うこと」や「自分の未来は明るいと思うこと」などが挙げられます。内閣府の「子ども・若者白書」によれば、日本の子どもは、諸外国と比較してこの数値が低い傾向にあることがわかります。今回の共同研究を通じて、自己肯定感を高める一つのアプローチとして、「正解がない問いに取り組むこと」「目的・ゴールをしっかりと持つこと」「自分の役割を認識すること」「周囲の人からのフィードバックにより達成感を得ること」といった4つの要素の重要性が浮かび上がりました。また定量調査の結果からは、地域との関わりを持つ子どもたちは、地域との関わりが低い子どもたちと比べて、自己肯定感の数値が2割ほど高いことがもわかりました。つまり、地域と関わりながら学ぶことは、日本の子どもたちの自己肯定感を育むにあたって、ひとつの鍵となりそうです。そのほか、「他者理解・共感の高まり」「生きる力の高まり」「先生のモチベーションの向上」「地域のつながり活性化」といった視点について、同様に定量調査と共同研究から見えたことをご報告させていただきました。(共同研究報告、定量調査結果の詳細はこども研究所わくわくみらいリポートをご覧ください。)

考察を報告する客員研究員

考察を報告する客員研究員

研究員の考察を受けたのち、調査時に同小学校の校長を務められていた山下由修先生からも貴重な意見をいただきました。現場で感じたのは3つの転換だったといいます。「子ども観の転換」「教師観の転換」「地域・学校の転換」と挙げ、子どもが変わることはもちろんなのですが、印象深かったのが、当時担任を務めていた教師の変化だったそうです。『ある出来事をきっかけにして、教師が子どもたちの可能性に気付いたんです。その瞬間に教師も自分が果たすべき役割に気づき、その後、劇的に成長を遂げていったと感じました』。地域と学校が関わり合いをもつことが、子どもたちだけでなく、教師に、そして"地域の空気"を変えることにつながったと山下校長はおっしゃっていました。

元静岡市立清水江尻小学校校長 山下由修氏
元静岡市立清水江尻小学校校長 山下由修氏

その後、参加者同士による対話が行われ、各テーブルでの感想を発表していただいたのち、会の締めくくりとして、ふたたび嶋野氏が登壇され、総括をいただきました。今回の調査結果を見て驚いたのが、子どもが変化する瞬間で、まさに「脱皮」と呼ぶにふさわしいくらいの変わりようが見えたと述べられました。

参加者による対話
参加者による対話

『ドキュメンタリー映像を見ただけでも、人生で何度あるかというレベルの脱皮をした生徒がたくさん見られた。その姿を見て本当にワクワクしましたし、感動した。こういったことで心が動くということは、まだまだ私も若いなと感じました(笑)』。また、地域と学校が関わることが、こんなにも子どもたちのパワーを"発動"させるのかと感じたということにも驚いたといいます。子どもが変わる、それによって教師が変わる、地域が変わるという好循環をみなさんでもつくっていってほしいと述べられ、会を締めていただきました。

嶋野氏による総括
嶋野氏による総括

博報財団こども研究所では、今回の調査結果のみならず、研究の結果を順次ホームページにアップしていく予定です。教育に携わるできるだけ多くのみなさんにご覧いただき、教育の現場に活かしていただければ幸いです。

登壇者プロフィール

嶋野 道弘氏(しまの みちひろ)
元文教大学教授

文部科学省初等中等教育局主任視学官、中央教育審議会初等中等教育分科会専門委員を歴任。専門領域は、生活科概説、生活、子ども教育連携論、生活科教育法特論、総合学習特論など多岐にわたり、現在は公益財団法人 博報児童教育振興会の理事として活動している。
著書『これからの生活・総合―知識基盤社会における能力の育成と求められる教師力』(共編著、東洋館出版社)など。

山下 由修氏(やました よしのぶ)
静岡市立大里中学校校長 元静岡市立清水江尻小学校校長

静岡市内小学校、中学校で教諭として勤務。静岡市教育委員会での勤務を経て、静岡市立清水江尻小学校に校長として着任。静岡市初のコミュニティ・スクールを創設した。本年度より静岡市立大里中学校に校長として、キャリア教育、特別支援教育をベースにした地域とともにある中学校づくりに取り組んでいる。

八木 祥和(やぎ よしかず)
博報財団こども研究所所長

1989年情報通信企業入社。1996年博報堂に入社。マーケティングプラナーとして得意先企業の市場調査や商品開発、コミュニケーションに関わる業務に従事。以降、博報堂のナレッジマネジメントの再構築の推進や、ショッパー・リテール領域を専門とするマーケティング部門の責任者などを経て、2017年4月「博報財団こども研究所」立ち上げに伴い所長に就任。東洋大学非常勤講師(2016年~)、ビジネスモデル学会プリンシパル(2016年~)。

シンポジウムの様子

開会あいさつ
八木祥和(博報財団こども研究所所長)

基調講演「地域から関わる学びから見る、子どもの"実態"と"実体"」
嶋野道弘氏(元文教大学教授)

調査「地域を動かす、子どものパワー!」
ドキュメンタリームービー

調査結果報告1
博報財団こども研究所研究員

調査結果報告2
山下由修氏(静岡市立大里中学校校長 元静岡市立清水江尻小学校校長)

対話~総括
嶋野道弘氏(元文教大学教授)

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