2020年の14歳 Part.1
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3冊同時刊行 [Part 1 / 2 / 3]資料請求はこちら(博報堂教育財団ウェブサイト)からhttps://www.hakuhodofoundation.or.jp/contact/request/調査後記35©公益財団法人博報堂教育財団2021 PrintedinJapan本誌掲載の記事・写真の無断転載をお断りします。写話による、ありのままの子ども2020年の14歳Part1発行日:2021年7月30日発行人:中馬淳発行:公益財団法人博報堂教育財団〒100-0011東京都千代田区内幸町二丁目2番3号日比谷国際ビル14階Tel 03-6206-6266www.hakuhodofoundation.or.jp※本誌の内容は、ウェブでも公開しています。企画・編集:博報堂教育財団こども研究所編集・構成:沼上純也(イヰマ)編集補助:川田祥世、西村健、平田和佳、大河原かなみ、小沼美優、堀山結花アートディレクション:大西隆介(directionQ)デザイン:椙元勇季(directionQ)印刷・製本:田宮印刷株式会社「推しにお金を使いたい時って、けっこうヤバいです」(Part2-05FJさん) 2020年下半期の芥川賞に、『推し、燃ゆ』という小説が選ばれた。主人公の女子高生が推している男性アイドルのネット炎上事件を軸にしながら、今の10代の推しカルチャーをめぐる心象を描いた作品だ。この受賞で「推し」という言葉を知った大人も多かったのではないだろうか。 私たちが14歳を対象に行った写話調査でも、女子15名中6名が「推し」関連と思われる写真とエピソードを熱心に紹介してくれた。「キンプリ」「ジャニーズWEST」というジャニーズ系に加え、「すとぷり」「まふまふ」「MeseMoa.」など、ネットを中心に活動しているインディーなタレントが目立っている。 『推し、燃ゆ』の主人公は、人とのコミュニケーションが苦手で、「推し」に対する家族の理解も得られずに学校や家庭から孤立していくのだが、調査対象の14歳の人間模様は様々だ。むしろ対人関係能力が人一倍優れていて、「推し」を通して学校内や日本全国まで友達を増やしていく女子もいれば、母親から勧められて推しにハマり、今は親子で楽しんでいる女子もいたりする。 気になるのは、推し現象が、これまでのファン現象とどう違っていて、どう同じなのかということだ。14歳の推しの対象がネットから生まれてきたインディーズ色の強いタレントであることは既に述べたが、まだマイナーな存在である「推し」を応援しているという「育て」感覚があることは一つの特徴だろう。「推し」というボキャブラリーが1980年代のオタク文化にルーツを持つという説もあるが、オタク文化から、地下アイドルといった男子の推しカルチャーを経て、女子にシフトしてきているようにも見える。 14歳の彼女たちが「推し」を形容するときに「崇める」「尊い」などという言葉が選ばれ、推しの誕生日を祝うためにグッズを並べた様子がまるで生誕祭の祭壇のように見えるのは、2020年ならではのことなのか? 推しのためにお金を使うことが喜捨のような感覚になっているのは、AKBの男子ファンがCDを大量に購入して握手券を求めるのとは少しばかりニュアンスが違うのか? 疑問は尽きない。 一方で、これらの推し現象については、ネット世代特有とも言えるタレント側の「神秘化戦略?」の果たす影響も大きいのかもしれない。たとえば、ネット上では顔は公表せずにアニメのキャラクターになっていて、ライブイベントに参加して始めて人間としての当人に会える、といったヴァーチャル性とリアル性を巧みに混在させたやり方だ。 いずれにしても、子どもたちの自己肯定感の大切さが指摘される近年にあって、当の子どもたちにとっては、誰かを推している自分のことは少なくとも好きでいられるようなのだ。(W)推しと14歳女子の2020年

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